「キヨおぉ私とも遊ぼうね、海行ってプール行って、あとお祭りと遊園地とバーベキューもしたいし」

 「マユ欲張りすぎ」

 「なんだとう、シキも参加だからね」

 「オミハラ、そんなんで宿題終わるのか?」

 「うわあああん、アオイまでそういう言い方するんだああ!」

 「一緒に宿題やる日も作ったらいいんじゃないかな」

 「キヨハ、マユのこと甘やかしちゃだめだよ」

 「自力で解けるように手助けするだけだから」

 「頭のいい奴らなんて嫌いだあ」

 レイとシキちゃんがちょっと別格なだけで、マユだって成績は悪くない。普通科と特進科は別々に成績が出るからマユがちょっと低く見えるだけで聞いた話ではテストの難易度がそもそも違うらしいからそう考えたらマユは秀才の部類だろう。もちろんカガチくんも。

 「ていうか、アオイはシキがとられたらいやだからそんなこと言うんでしょ」

 「さてな」

 「え、二人とも付き合ってるの?」

 「そだよ、あれ、キヨハ知らなかったの?」

 「だ、だって全然、見ててもわからないもん」

 カガチくんは陸上部だから登下校だって時間が合わないし、だからシキちゃんと一緒に居るところも見たことがない。教室では、まあよく話しているけれど私やマユを交えていることも多いしそんなこの間デートしてとかなんとかそんな話題は一切なかった。わかるわけがない。

 「わかりにくいもんねー、中学一緒なんだよ二人とも」

 「そうなんだ」

 「ごめん、わざわざ言うことでもないと思ったから」

 「ううん、いいの、びっくりしただけ」

 恋愛ロールモデルがジュンイチとアカリなのも考え物だなって内心ため息をついた。見てわかる二人じゃないのは確かだとしても私の恋愛偏差値は絶対的に低いわけだし。そういう感情が最終的に必要かどうかは置いといて「何事も実際にやって見て聞いて、よ」というマリアの意見を大切にしよう。

 「レイ」

 「ん?」

 「レイも、遊びに行こうね」

 「…うん、行く」

 なんでこんなに寂しそうなんだろう。いつもはため息がでるくらいうるさくてとても学年主席になんて見えないのに。ジュンイチと正反対の普段の振る舞いからは想像もできないくらい静かな声でレイは頷いた。

 やって、見て、聞いて。そうだ、私はジュンイチというフィルターを通したタカシロ レイしかまだ知らないんだから。きちんと、知らないと。

 「まあまあ夏休みの予定は一旦置いといて、まずは今日のケーキだよ」

 「マユってば、目がケーキになってるよ」

 「だってテスト疲れたんだもん」

 わかってしまったことは知りたくなかったことで知らないほうがよかったことでもあったけれど、それを拒否したいとは不思議と微塵も思わない自分がいる。