「わかんないことあったらマユより俺のが詳しいかもよ」
「あ、こらレイ、すぐそうやってナンパする!」
「ナンパじゃないですう」
一人でいたときは周りにこんなに音や情報があふれてることはあまりない。オンライン状態だからと言って処理しきれないデータ量を受信したりはしないから。それが、こんな狭い半径一メートル程度のたった四人の会話がめまぐるしくて思わず声を出しながら笑ってしまった。
「はりゃ、どしたんキヨハ」
「だって、あんまりテンポがよぎるから」
「そう?みんなこんなもんじゃない?」
大人数で話すことも、ころころ話題が変わることも、あちこち目線が忙しいのも全部なにもかもが私にとっては初めてで新しいことだらけだ。勉強なんてなにも心配してなくて、なんなら人間関係のほうをルイさんたちは懸念していたけどそんな心配もないだろう。
今はまだ表面しか人間じゃなくても、彼女たちみたいになれたら、私は本当の意味でタカシロ キヨハになれるような気がする。
『俺はキヨハを愛してるんだよ』
ジュンイチの声が反芻する。アカリのことばっかり考えていたけれど私は、私としてジュンイチをきちんと見れていたんだろうか。