「タカシロっていうと紛らわしいからキヨハでいい?キヨちゃんとかのがいい?」
「あ、ううん、キヨハでいいよ」
「あたしのこともマユでいいからね、こっちもシキってよんであげて」
「こらー、連絡事項残ってるから静かにー」
促されて前を向くとアリシオ先生は気まずそうに私を見た。まあ、仕方がないのでこれ以上睨むのはやめてあげよう。
時間割の変更や連絡事項を先生が話終わると同時にチャイムが鳴る。ざわつく教室では思い思いに水分をとったり、教科書を準備したり、すごい、たかだか二十人前後でもやってることってこんなにばらばらになるんだ。
「ね、キヨハ教科書とかどしたん?」
「来週にはくるだろうって」
「じゃーあたしが見せてあげるね」
「期末前に編入なんて大変だな」
カガチくんが静かにそう言った。さっきも思ったけどたたずまいが高校生っぽくない。ひどく落ち着いていて大人っぽかった。
「これでもまだマシなタイミングらしいんだけどね」
「シキにノート見せてもらうといい。俺も世話になってる」
「まだ入学して半年なのに、毎日ちゃんとノートとればいいだけでしょ」
あきれたようにシキちゃんはため息をついた。とはいえ世話になってるってくらい毎度毎度貸し借りしているようだからきっと仲がいいんだろう。
ほほえましく見ていると背中をペンの背でつつかれた。そうだ、後ろに厄介なのがいるんだった。