「俺はキヨハを愛してるんだよ」

「でも私はもうあなたを愛していないのよ」

 だってあれはアカリの記憶だから。

 そしてアカリは私の中で生きていたから。同じ体で生きていても彼女はジュンイチが自分以外を愛そうとするのを酷く嫌がっていた。最近はもう彼女の意志を感じることもなくなったけれど、彼女はアキトさんよりジュンイチを愛していて、だからこそジュンイチの関心が他へ向くのを恐れていた。

 迂闊なことしたらふられそうでと彼は言ったけれど、そんなのアカリだって同じこと考えていたんだからお互い様だ。この二人、根本的な会話ってものが少なすぎる。口も声帯も、ついてるくせに。三年間も一緒にいたくせに。私と比べて時間をたくさん持ってたのに。

「愛されてなくても、きみが生きているだけでこの世界には価値があるよ」

痛いくらいまっすぐな目線は、今度は間違いなく私を見ていた。