「すごい、人間にしか見えないし皮膚だってもっとシリコンみたいなものだと思ったのに」

 「少年時代に読んだSF漫画の世界は結構すぐそこなのかもしれないですねえ」

 「あはは、驚いてもらえると研究者冥利に尽きますね」

 先生に座るよう促され、ルイさんの隣に腰を下ろすとルイさんは嬉しそうに笑っていた。私が人に見えるというのなら第一関門は突破したようなものだ。詳細知ってる先生たちがこの反応なら大丈夫だろう。

 「人数が少ないクラスに投入という形になりますので、キヨハさんには特進科に通学していただきます」

 「生徒数はどのくらいですか、詳しい人数までは伺ってなくて」

 「一学年三百人程度ですかねえ、特進科は二クラスあって二十五人ずつ、二年から普通科の中で文系理系のコースが分かれるくらいで変わったことはそんなにないと思いますよ」

 入学時、普通科と特進科をそれぞれ受験し、全体で七クラス、うち二クラスが特進科。残りの五クラスは進級時に文理選択があるらしい。もっとも特進科じゃなくてもそれなりの進路選択が常な学校だという。私の特進科入りはほとんどズルみたいなところもあるし胸は張れないけれど。

 「ああ、うちのクラスにもタカシロって苗字の子がいるんですよ」

 「へえっ、先生それ女の子ですか? 私お友達になれそうですか?」

 「いや、男子生徒です。名前はレイって女の子みたいな名前ですけどね」

 「レイ?」

 「ええ、タカシロ レイという男子生徒です。優秀な子ですよ」

 「ルイさん」

 「なんだ、ジュンイチ」

 さっとジュンイチが顔を青くした。不思議そうにルイさんがジュンイチの顔を覗き込む。つられて私もジュンイチのほうを見るときょろきょろと目線を泳がせながらカチカチと小さく歯を鳴らしている。普段あんなに落ち着き払って、なんなら眠そうにしているジュンイチは見る影もない。
 校長先生は不思議そうに「どうしました」とジュンイチに声をかける。ルイさんはジュンイチの次の言葉を待っているらしく微動だにしない。

 「だめだ、ルイさん、俺の経歴知ってるでしょう。レイがいるなんて聞いてない」

 「あれ、お知り合い…ですかね?」

 私のデータにレイという人物はいないから、多分アカリとは面識がないんだろう。それにしたってあの態度は、ちょっと普通じゃない。