「まあああ!可愛いわあ!」

 「ほんとほんと、スカートもっと短くしましょうよ!」

 「落ち着くです…キヨハ困ってる、ですよ…」

 ルイさんの言った通り投入実験は六月に繰り上げられた。邦泉高校という都内某所にある私立で、偏差値はそれなりだがスポーツはパッとしないところだった。研究所の最寄からはちょっと距離がある。二十三区内なのでしかたがないけれど、木の葉を隠すなら森の中、ということで人が多いところで生活することでより馴染ませるのが目的だといっていた、どこまでが本音かは知らない。

 「マリア、これ短すぎない?」

 「そーお?このくらいが良いわよお」

 「いざとなったら、あとで長くしちゃえばいいと思う、ですよ」

 「あーちょっとスピカったら、入れ知恵しないでよ!」

 スピカのたどたどしい英語にマリアはぷんぷんと怒っているジェスチャーをしてみせる。
制服の可愛らしい着こなし、みたいなものは検索してもヒットしなかったので実生活で吸収するしかなさそうだ。あまり目立ちすぎてはいけない、それは派手過ぎても地味過ぎてもだめなのだ。どこにでもいる高校生の女の子、投入実験の目的はそこにある。

 「今日は簡単に担任の先生と面談して、クラスに入るのは明日からだからそんなに緊張しなくても大丈夫だ」

 「ルイさん、パパみたーい」

 「父親役なんだから当然だ」

 役じゃなくともこの人はご子息がいたはずだ。
 くすくすと笑うとファブリが「まんざらでもなさそうだよね」とこっそり耳打ちしてきたので首を縦に振る。私は、アンドロイドだ。けれどここでは家族だとあれから何度も声をかけてもらっている。私はタカシロ キヨハなのだ。