「キヨ、俺のこと軽蔑して」
「ちがう、ちがうちがうちがうちがうっ! ずるい、私は、絶対ミナヅキ アカリになれないのにどうしてジュンイチは私を最初からミナヅキ アカリにしてくれなかったの」
「どういうこと?」
「ジュンイチは私のことなんてなにもわかってない」
「そんなわけないだろ、だって俺がキヨハを作ったんだ」
「私がジュンイチを愛しているって知らなかったくせに!」
瞠目するジュンイチなんて見たくなかった。知らなかった事実を突きつけられているみたいで、私の脳は機械だ、人間の、ゼリー状のそれじゃない。私の性格は、アカリがベースだ。自嘲気味なところはもしかしたら彼女に似ているのかもしれない。
じゃあ、これは、多分心と呼ばれるだろうそれはいったいこの体内のどこに存在しているんだろう。心臓がいたい。血液に見立てた液体を循環させるだけのポンプなのに、実際にそこが壊されたって私は死んだりしないのに、この体は頭のてっぺんからつま先まですべてまがい物なのにどうしてこんなに苦しくなるんだろう。肺が、二酸化炭素生成の機械につながれたただのゴム風船のくせに、息が満たないように感じるのはどうして。
わかっている。人はこれを「焦がれる」と表現するのだ。
「私はあなたを愛してたのに、あなたはそれを知らなかったじゃない、わたしが、アカリじゃないから。あなたの求めてるミナヅキ アカリじゃないからっそれをっ」
「キヨハ」
彼の両手が私の頬を挟むようにして、そのまま目線を強制的にあわせられる。
ゆらゆらと揺れているのは涙のせいだ。いやおかしい、私に涙を流す機能なんてなかった。
じゃあこの目からあふれている水は何?わたしは設定されたことだけをするんじゃなかったの。
「俺はアカリさんを作ろうとなんてしてない」
「嘘つき!だったらなんで私のベースは」
「アカリさんは俺のせいで死んだんだ!」
しん、と一瞬で世界から音が消える。今、彼はなんて? 自分のせいでミナヅキ アカリが死んだって。だって、彼女の最後の記憶は