「おはようございます。ランドリー石崎でございます」




おはようございます。



私はベッドから身体を起こし、壁時計を見上げた。



8時か。




「ご迷惑でしたら、失礼致しますが?」



部屋の外で、妹がベッドのシーツを催促している。



実家暮らしでお互い社会人の私達姉妹は、家業が忙しくあまり干渉しない両親達から足らない家事を物心ついた頃から補いあって生きてきた。



朝起きて、食べる物はあるが、調理はされていない。



最初はご飯を炊いて食べる事から始めた。



目玉焼き、卵焼き、味噌汁、カレー。



ジャムに、ゼリーに、はちみつレモン。




「すぐ出すよ」

「じゃ、朝ごはんは肉で願います」




土曜の朝食は、私の役目。

朝9時開店のスーパーに行き特売の国産牛半額と、大好きなベーカリーで焼き立てのフランスパンを買おう。




「何時ごろ出来る?」

「10時だよ」



私は自転車に乗ってスーパーを目指した。



結局、昨夜は冬野さんに送って貰って家に着いたのは2時だった。



私にしては結構な夜更かしだったけど、意外と疲れてもないし、今夜も充分働ける。




と言うか、冬野さんとまた会えるなんて、楽しみでしかない。




「何この肉プリンみたいに柔らかいんですけど…」



妹が私の作る朝食に舌鼓を打つ。

本日は九州産A5ランクのサーロイングラム千円(半額の特売品)ですから。



「土曜の朝ですから」



まあ、普通の土曜の朝はステーキじゃないわな。



「鯛のカルパッチョ美味」



グリーンリーフの詰め合わせにベビーコーンとラディッシュと生のマッシュルームの薄切りを散らして、鯛の薄作りをのせて、そこにオリーブオイルとバルサミコ酢とレモン汁、マジックソルトと醤油で作ったドレッシングをかけた即席だが、好評で何よりだった。



「ところで昨夜はお財布でも失くしたの?帰ってきたの2時過ぎてたよね」




私は、華麗に濃縮パイナップルジュースのソーダ割り(もちろん朝はノンアルコール)を、鼻腔に逆流させつつ霧吹きの様に吹いた。