「オレは、この道の、この辺りで、いつも白い着物姿の幽霊が出るって言われているから、恐くて本当はこの道を通るのが嫌だったんだけど、どうしても親戚の法事に出なければいけない羽目になって、仕方なく参加して、おまけに明日出張で朝も早いから、今晩は酒も飲まずに、最後まで皆に付き合って、気が付いたら遅い時間になっていて、本当にもう、最悪だよ」

 私は興奮冷めやらぬまま、一気に今夜の不満をぶちまけた。

「そんなこと、ワタシに愚痴られても、知らないわよ」と女が言った。

 少しして落ち着いてくると、女の子が何処かであったことのある顔に思えてきた。

「ところで、ワタシ、前に座ってもいいかしら?」と女の子が言うので、

「どうぞ、ご自由に」と私は言った。