「バカ言うな。心臓が止まりそうなのに、深呼吸なんかしたら、本当に止まっちゃうよ」と私が、混乱して支離滅裂なことを言うと、女は笑いながら、

「本当にアナタ、小心者なのね」と言った。

「誰だって、後部座席に突然人が座っていたら、驚くだろうよ」

「あら、ワタシ、結構前から座っていたのに……」

「そういうことじゃなくて……」

 女の服装が白い着物姿でなく、平凡な女の子の服装であり、スラッと細く長い足も二本あることから、私は女が幽霊ではないかもしれないと思い始めた。