「ヤスオ君も、どうしてそこまで、往生際が悪いの? 何か自分の事を名乗れない様な、やましい事でもあるの?」

「イヤイヤイヤイヤ、本当にオレはヤスオ君ではないから。この件は、絶対に譲れないからね。どうも何時まで話してもらちがあきそうにないから、もうやめよう」

 そう言うと、私は女に三万円を渡した。

 私は、気持ちを落ち着かせようと、車外に出てタバコを吸った。一服して車に戻ると、助手席から女の姿は消えていた。

 私は車を運転しながら、若い女の幽霊の事を考えていた。どう考えてもあの幽霊が人違いをしているとしか思えない。しばらくして冷静になると、これは幽霊の詐欺だったのかもしれないと思った。