「確かに、店のパソコンから瑞奈ちゃんの名前で発注されてました。でもそれは、発注台帳に書かれた正しい数字。その十分後に、同じ名義で追加発注されてたんです。ただ、それは彼女が終電に乗っている時間帯でした。警備員のおじさんに確認済みです。勿論、その後に誰も鍵を借りには来ていません」

「どういうこと?」
「瑞奈ちゃんが店を閉めたあと、彼女を含め、誰も店のパソコンに触れていないってことになります」

 誰もパソコンに触れていない?
 ふいに井浦さんと目が合ってすぐ逸らされると、いつになく冷たい目線が田辺さんに向いた。

「で、思ったんですよ。スマートフォンでログインすれば、どこにいても発注できるんじゃないかって。田辺さんは営業の一環として、出張先で料理を提供してたことがあるんですよね? その時に登録してると思って先方に聞いたら、田辺さんから連絡があったって言われたんですが……念のため、履歴の確認させてもらっていいですか?」

 薄ら笑みを浮かべた井浦さんが言うと、田辺さんは顔を真っ青にしてその場に立ち崩れた。

「……私は今まで、あなたを戦友だと思っていたわ。会社から新店舗の立ち上げを任されてから、店のことを常に考え、より良い料理とサービスを続けていった。少なくとも、私達は同じ方向を向いていると思ってた。……あなたの暴走を、私は止められなかった。ごめんなさい」