何か騒いでいるけど、気にしない。
 営業後にアルバイトのスタッフがしっかり掃除してくれた作業台に洗剤をかけて、もう一度洗い始めた。

「おい! なにしてくれてんだよ!」
「すみません、この掃除が終わったら食材の発注をしないといけなくて。だからお話は明日まとめて聞きますから、今日は帰ってください。明日は早番ですよね? いつもギリギリに来られますし、たまにはキッチンスタッフの納品の片付けでも手伝ってあげたらいかがですか?」

 手を止めずにキッチンの外にいる田辺さんに向かってできるだけ大きな声で言う。
 田辺さんは大きな舌打ちをして椅子を蹴り倒すと、そのまま扉から出て行った。

「全く……二度手間させないでよね」

 作業台と床の掃除を済ませ、蹴った反動で転んだ椅子を直してから、食材の発注作業を行う。
 既に夜の十一時を越えるところだった。

 その日はどうやって帰れたのか、よく覚えていない。

 事前に確認していた発注数をパソコンに入力して発注依頼を終わらせる。
 戸締りを確認してから警備員のおじさんに鍵を返し、終電ギリギリに飛び乗った。

 家に着いた途端、一気に襲ってきた眠気に耐え切れず、私は玄関で倒れ込んで寝てしまった。