ささやかなエールが嬉しかった。
 「頑張れ」の一言で、私は何度も前を向けるだろう。


 袋に入ったリンゴを持って帰宅すると、さっそくコンポートを作り始める。

 リンゴの皮を剥いて一口大に切り、バターで炒め、そこに砂糖とレモン汁を加えて煮詰める。
 ここでシナモンを加えるのが定番だけど、好き嫌いの多い香辛料でもあるため、注文する人は変わってくる気がする。

 ひとまず、ここはシナモンは後で考えることにした。

 これを、買ってきたリンゴ三種類すべて作って粗熱をとる。

 すべて作り終えると、事前に作っておいたカスタードクリームと組み合わせて、食べ比べを始めた。

 リンゴの食感とクリームの甘さ。パイ生地に合わせたときを想像しながら、ひとつずつ書き出していく。

 田辺さんからお荷物同然と言われ、使えないキッチンスタッフと言われ続けてきた。
 それでも井浦さんや佐保さんの支えもあって、今では一人でオーダーを捌いている。

 努力した結果が今だ。
 何度躓くことがあっても、何度怒鳴られようとも、前を向けばなんだってできる気がした。