「へへへ。こんな楽な仕事はねぇ。村を襲ってもみんな無抵抗なんだからな」
ゴメス率いる盗賊達はべボーテ村を見渡しながら邪悪な笑みを浮かべる。
村内ではあちこちから呻き声が聞こえていた。
村人達は地面に倒れ、喉をおさえながら苦しみもがいている。
そんな地獄のような光景の中を、盗賊達は悠々と歩いて行く。
「ゴメス…これは…どういう事だぁ…」
ゴメスの足元で1人の男が声を絞り出すようにしてそう言った。村の村長、シドだった。
彼も他の村人と同じように地面に倒れもがいている。
「間抜けめ。あの酒には毒が入っていたんだよ。即効性は無いがじわりじわりと苦しめて最後は死にいたらせる毒がな」
ゴメスは道端で死んでいる虫を見るかのような視線をシドに注いだ。
「ふざけ…るな…約束と…違う…冒険者を…差し出してやっただ…ろ…」
「バカかテメェは。その冒険者を雇ったのはテメェ自身だろうが。こっちはハナから約束なんて守るつもりはなかったんだよ」
「この…外道…が…」
シドのその言葉に思わずゴメスは吹き出した。
「知らなかったのか?俺たちは盗賊だぜ?」
その後もシドは何かを言おうとしていたがゴメスは無視して村の中心まで足を運んだ。
「数人が村の出入り口を塞いで村人が逃げられないようにしておけ。それ以外の奴は家々を漁って食料、金目のものを徹底的に集めてこい。毒を飲んでない奴が居たら縛り付けておけ。抵抗するようなら…殺せ」
ゴメスがそう命じると盗賊達は雄叫びをあげて村中に散っていった。
「くそ!」
ウォリーは鉄格子を殴りつけて、その場にへたり込んだ。
(こうしている間にも村人達は…)
彼が悔しさに歯を食いしばっていると、突然頭の中で音声が鳴った。
≪お助けスキル『盗賊マン』の取得が可能になりました≫
「盗賊マン…?」
頭の中でスキルを起動し、詳細を開いてみる。
≪盗賊マン≫
≪発動中は手先が器用になり、鍵開けやトラップ解除などが可能になる。また、気配や足音を消して移動する事も出来る。取得の為に必要なお助けポイント:30000ポイント≫
(鍵開け…!?そうか、これを使えば)
ウォリーは急いでポイントを支払い、スキルを発動させた。
「誰か、細長い…針金のようなものを持っていませんか?」
突然のウォリーの問いかけに冒険者達は顔を見合わせた。
「これでは駄目か?私のヘアピンだが…」
そう言ってダーシャがピンをウォリーに差し出した。
「ありがとうございます!」
ウォリーはそれを受け取ると鉄格子の鍵穴に差し込む。特別な知識は無かったが、直感に任せると自然と手先が動いた。
ガチャリと音がして1分も経たないうちに解錠された。それを見て冒険者達から驚きの声が上がる。
「おおお!?何だお前どうやって開けた!?」
「っていうかそんな技術持ってんなら何でさっさとやらなかったんだよ!」
口々にウォリーを問い詰めるが、彼は適当に流した。今さっきスキルを覚えたなどという話しを説明しようとするとややこしくなる。それに、今はそれよりも優先しなければならない事がある。
「村が危ない!急ぎましょう!!!」
冒険者達は急いでその場を駆け出した。
ウォリー達が村に到着した時、村内の様子は悲惨だった。
女性や子供は縄で身体を縛られ、男達は地面に倒れてもがき苦しんでいる。彼らの肌は青く変色しており、毒を盛られたのだと一目でわかった。
泣き声や苦しみ喘ぐ声の中に、盗賊達の笑い声が混じって聞こえる。
ウォリー達は木々の影に身を隠しながらその様子を窺っていた。
「村長の野郎は裏切られたようだな」
「ふん!盗賊と取引なんかしようとするからだ」
「しかし村人に罪はありません。何とか救出しましょう!」
冒険者達は地図を地面に広げる。
「2チームに分かれて挟みうちにする形で攻め込もう」
ウォリーとダーシャの2人は村の南側の入り口から、それ以外の3人は北側から攻めて行く事になった。
冒険者達は別れ、それぞれの配置へ向かって走って行く。
村の出入り口には盗賊の見張りが2人立っていた。ウォリーは剣を抜いて戦う準備をする。
彼にとって、新スキルで強化されたステータスを試す機会でもあった。
ダーシャは魔法を使って戦うつもりなのか、見た所武器らしいものは所持していない。
あの村の惨状を目にした時から彼女が怒りで震えているのを、隣でウォリーは感じ取っていた。
ウォリー達が敵前に飛び込んでいく。盗賊達も気付き剣を構えるが、ウォリーが切り込むよりも速くダーシャの方が前に出て行った。
彼女の身体から黒と青が混じった不気味な炎がみるみると溢れ出て、彼女の身体を覆っていった。
魔人族のみが発動出来ると言われる特殊なスキル『黒炎』。黒い炎を身体に纏って自在に操ることが出来る能力。
直接目にするのはウォリーも初めてだった。
炎が彼女の両手に集まっていき、それは巨大な鉤爪のような形に変化した。
見張りの盗賊2人相手に、彼女は炎の爪を振るい、一瞬にして敵を切り裂いてしまった。
そのまま彼女は村内に飛び込んでいくと、襲い来る盗賊を次々倒して行った。
ウォリーもそれに続いて行く。
村に入って早々2人の盗賊に囲まれたウォリーは、前後からの攻撃を上手く受け流しつつ、隙をついて2人の盗賊の脚を斬りつけた。
立つ事が出来なくなり崩れ落ちる盗賊達。レビヤタンに居た時は回復中心で戦う事は滅多になかったが、それでも彼はAランクパーティと行動を共にしていた。
さらに今はお助けポイントによるステータス強化も加わっている。数人の盗賊相手ならウォリーでも十分勝負になるようだった。
その時、ウォリー達から見て村の反対側も騒がしくなる。どうやら別のチームも攻撃を開始したようだった。
「こいつら…どうやって抜け出した!?」
ゴメスは焦りながら周囲を見回す。そして、黒炎を操り盗賊を圧倒しているダーシャが最も厄介と判断したゴメスは、部下達に指示を出した。
「あの女だ!魔人族の女をまず仕留めろ!!」
ゴメス率いる盗賊達はべボーテ村を見渡しながら邪悪な笑みを浮かべる。
村内ではあちこちから呻き声が聞こえていた。
村人達は地面に倒れ、喉をおさえながら苦しみもがいている。
そんな地獄のような光景の中を、盗賊達は悠々と歩いて行く。
「ゴメス…これは…どういう事だぁ…」
ゴメスの足元で1人の男が声を絞り出すようにしてそう言った。村の村長、シドだった。
彼も他の村人と同じように地面に倒れもがいている。
「間抜けめ。あの酒には毒が入っていたんだよ。即効性は無いがじわりじわりと苦しめて最後は死にいたらせる毒がな」
ゴメスは道端で死んでいる虫を見るかのような視線をシドに注いだ。
「ふざけ…るな…約束と…違う…冒険者を…差し出してやっただ…ろ…」
「バカかテメェは。その冒険者を雇ったのはテメェ自身だろうが。こっちはハナから約束なんて守るつもりはなかったんだよ」
「この…外道…が…」
シドのその言葉に思わずゴメスは吹き出した。
「知らなかったのか?俺たちは盗賊だぜ?」
その後もシドは何かを言おうとしていたがゴメスは無視して村の中心まで足を運んだ。
「数人が村の出入り口を塞いで村人が逃げられないようにしておけ。それ以外の奴は家々を漁って食料、金目のものを徹底的に集めてこい。毒を飲んでない奴が居たら縛り付けておけ。抵抗するようなら…殺せ」
ゴメスがそう命じると盗賊達は雄叫びをあげて村中に散っていった。
「くそ!」
ウォリーは鉄格子を殴りつけて、その場にへたり込んだ。
(こうしている間にも村人達は…)
彼が悔しさに歯を食いしばっていると、突然頭の中で音声が鳴った。
≪お助けスキル『盗賊マン』の取得が可能になりました≫
「盗賊マン…?」
頭の中でスキルを起動し、詳細を開いてみる。
≪盗賊マン≫
≪発動中は手先が器用になり、鍵開けやトラップ解除などが可能になる。また、気配や足音を消して移動する事も出来る。取得の為に必要なお助けポイント:30000ポイント≫
(鍵開け…!?そうか、これを使えば)
ウォリーは急いでポイントを支払い、スキルを発動させた。
「誰か、細長い…針金のようなものを持っていませんか?」
突然のウォリーの問いかけに冒険者達は顔を見合わせた。
「これでは駄目か?私のヘアピンだが…」
そう言ってダーシャがピンをウォリーに差し出した。
「ありがとうございます!」
ウォリーはそれを受け取ると鉄格子の鍵穴に差し込む。特別な知識は無かったが、直感に任せると自然と手先が動いた。
ガチャリと音がして1分も経たないうちに解錠された。それを見て冒険者達から驚きの声が上がる。
「おおお!?何だお前どうやって開けた!?」
「っていうかそんな技術持ってんなら何でさっさとやらなかったんだよ!」
口々にウォリーを問い詰めるが、彼は適当に流した。今さっきスキルを覚えたなどという話しを説明しようとするとややこしくなる。それに、今はそれよりも優先しなければならない事がある。
「村が危ない!急ぎましょう!!!」
冒険者達は急いでその場を駆け出した。
ウォリー達が村に到着した時、村内の様子は悲惨だった。
女性や子供は縄で身体を縛られ、男達は地面に倒れてもがき苦しんでいる。彼らの肌は青く変色しており、毒を盛られたのだと一目でわかった。
泣き声や苦しみ喘ぐ声の中に、盗賊達の笑い声が混じって聞こえる。
ウォリー達は木々の影に身を隠しながらその様子を窺っていた。
「村長の野郎は裏切られたようだな」
「ふん!盗賊と取引なんかしようとするからだ」
「しかし村人に罪はありません。何とか救出しましょう!」
冒険者達は地図を地面に広げる。
「2チームに分かれて挟みうちにする形で攻め込もう」
ウォリーとダーシャの2人は村の南側の入り口から、それ以外の3人は北側から攻めて行く事になった。
冒険者達は別れ、それぞれの配置へ向かって走って行く。
村の出入り口には盗賊の見張りが2人立っていた。ウォリーは剣を抜いて戦う準備をする。
彼にとって、新スキルで強化されたステータスを試す機会でもあった。
ダーシャは魔法を使って戦うつもりなのか、見た所武器らしいものは所持していない。
あの村の惨状を目にした時から彼女が怒りで震えているのを、隣でウォリーは感じ取っていた。
ウォリー達が敵前に飛び込んでいく。盗賊達も気付き剣を構えるが、ウォリーが切り込むよりも速くダーシャの方が前に出て行った。
彼女の身体から黒と青が混じった不気味な炎がみるみると溢れ出て、彼女の身体を覆っていった。
魔人族のみが発動出来ると言われる特殊なスキル『黒炎』。黒い炎を身体に纏って自在に操ることが出来る能力。
直接目にするのはウォリーも初めてだった。
炎が彼女の両手に集まっていき、それは巨大な鉤爪のような形に変化した。
見張りの盗賊2人相手に、彼女は炎の爪を振るい、一瞬にして敵を切り裂いてしまった。
そのまま彼女は村内に飛び込んでいくと、襲い来る盗賊を次々倒して行った。
ウォリーもそれに続いて行く。
村に入って早々2人の盗賊に囲まれたウォリーは、前後からの攻撃を上手く受け流しつつ、隙をついて2人の盗賊の脚を斬りつけた。
立つ事が出来なくなり崩れ落ちる盗賊達。レビヤタンに居た時は回復中心で戦う事は滅多になかったが、それでも彼はAランクパーティと行動を共にしていた。
さらに今はお助けポイントによるステータス強化も加わっている。数人の盗賊相手ならウォリーでも十分勝負になるようだった。
その時、ウォリー達から見て村の反対側も騒がしくなる。どうやら別のチームも攻撃を開始したようだった。
「こいつら…どうやって抜け出した!?」
ゴメスは焦りながら周囲を見回す。そして、黒炎を操り盗賊を圧倒しているダーシャが最も厄介と判断したゴメスは、部下達に指示を出した。
「あの女だ!魔人族の女をまず仕留めろ!!」