「のっぶくーん!」
「…………なに」
「こんにちは!」
「……」
「何してるの!?」
明るい声色がこちらにまで響く。
ノブくんの塩対応はうわさ以上。大した用事がないとわかった途端、長い足をうんと速く動かし出す。
紛れもない、拒絶。
でも、おとといといい先ほどといい、あそこまで冷たくはなかったけどな……。
「……ケイのやつ、ちょっとはおとなしくできねぇのかよ」
渡り廊下を横目に、リョクくんはため息まじりに呆れ笑いをもらす。
嫉妬してるようにもうかがえるのは、わたしの考えすぎかもしれない。
「ん?どした?」
ガン見しすぎていたのか、リョクくんが首をかしげた。
とっさに「なんでもない」とはぐらかし、お茶を飲む。この苦味がちょうどいい。
渋い緑色の水面がゆらり揺れた。
「やっぱまだ元気ねぇよな」
「……そ、かな」
顔を覗き込まれて固まってしまう。
呼吸が浅くなっていく。
「心配だし、今日は家まで送ってく」
付き合い始めてから毎日一緒に帰ってた。
駅まで歩いて、別れを惜しんで、家に着いたらメッセージを送る。
手をつないだ。たまにまたねのキスをした。遠回りもしたし、寄り道もした。家まで送ってくれたことも少なくない。