「エル〜!会いたかったよお!!」



気温が高くなってきた朝。下駄箱で上履きに履き替えていると、いきなり抱きつかれた。



「ケイちゃん……おはよ」

「おはよ〜!」



ふわりと包まれる、優しい金木犀の香り。

誕生日プレゼントでわたしがあげた香水だ。去年贈って以来、毎日つけてくれてる。

それがケイちゃんの香りになっていったのが嬉しかった。

わたし、嬉しかったんだよ。



「もう体調大丈夫なの!?」



昨日わたしは欠席した。

おととい図書室でうずくまっていたところに、司書の先生が戸締りをしにやって来てしまった。先生はわたしの様子を見るやいなや、保健室に連れていったあげくに親まで呼んだ。まあまあ大ごとになったことに罪悪感がある。

そうとう顔色が悪かったようで、親は一日わたしを休ませてくれた。おかげで気持ち悪さはだいぶ治った。はず。



「うん、大丈夫」

「ほんとに? ……やっぱりおととい先に帰らなきゃよかった」



しゅんとうなだれるケイちゃんに、胸がちくりと痛む。


でも帰ったんでしょう?

なんて。

バカだな。先に帰ってと言ったのはわたしじゃんか。