「会長からね、電話あったのよ。
今すぐ旅行から
出来るだけ 早く帰って来いって」

「今日、PTA査問委員会の臨時
召集がかかった。会長と女性副
会長である、私が対象者。要する
に査問会議にかけられるって、
電話だったのよ。」

「査問の嫌疑は、予算の横領。
やだ、PTA会費とか、学校予算
とか勘違いしないでね。向こう
は、そう勘違いを望んでいる
んだろって思ってるけどね。」

「正確な横領嫌疑は、PTA役員会
運営予算の横領ってことみたい
ね。ああ、あまり馴染みがないと
思うから、説明すると、学校の
予算って全くPTAの管轄じゃない
のね。これは、もちろん理解して
もらえると思う。それでPTA会費
っていうものが、別に1家族
とか、1児童とか、1親家族とか
で いろいろ規定を設けて、学校
関係と一緒に引き落としされる
んだけど、これがPTA予算ね。」

「これも 理解しやすいと思う。
で、実はもう1つPTAには予算柱
があるのよ。それが、PTA役員
運営予算。これは、地域団体や、
役員、OBからの行事祝儀という
名の、寄付で設けらているのね。
学校とも、一般PTAとも全く離れ
た所にある資金なのよ。」

「そこを横領したと嫌疑が掛け
られているって話ね。
まあ、どうしてそんな嫌疑になる
のかを、詳しく話すると、
けっこう細かい事を言わないと
いけないから、何なんだけど。」

「この嫌疑も 割りと予定調和な
のよ。ただ時期が悪いかな。
ほら、まだ記憶に新しいと思う
けど、ニュースにもなったよね。
総理の伴侶が1私立学校の行事に
出向いた事から不動産の便宜を
計らったとか忖度されたとか。」

「あの話以降、Pの運営費の流れ
を精査する動きが 割りと全国で
起きている最中なのよ、今も。
まあ、
そこにこじつけてきたわけね」

「もともと、あの総理婦人の
一件も、回りの公Pが動いて
リークしたんでしょ。原理は
同じ。出過ぎる杭は 打ってくる
のよ。1私立が目立つなってね。
メディア関係者の保護者に噂話
リークなんて、
手法は常套手段 だから。」

「それは、いいとして。
ようは、うちも目立っただけよ。
それも足元から頭を殴られたって
のが、本当に嫌ね。
男の妬みって。
そういうこと。うちの会長が
県知事の相談役に実質
なってる 事がバレたのよ。」

「会長は、県Pから日Pで役付き
になる事で、名実になれば
出る杭もなく、利権要求に切り
替えてくるから、それまでは
内密で相談役をしてたんだ
けどね。ふだんなら、こんな
ミラクル戦法は ないわよ。」

「けど、今の知事は 政党から
出てないし、支援政党も新進
気鋭の党だから、
現場の第三者委員会に参入し
やすい位置に入ってたからね。
力と、シップとれれば かなり
太い相談役よ、うちの会長。
残念なのは、
純血統じゃない事よね。」

「だから、なるべく目立たず
だったんだけど。それを、私が
壊してしまったのよね。
申し訳ないわ。
でも、後悔はしてない。」

「これはそうね選択の運命かな」

「春前に東の方に停泊予定の船で
新型ウイルスが発症したでしょ?
あの一報が報じられる前に、Pで
は船内状況を 掴んでいたのよ」

「これはもう、人海戦術じゃない
けど、子供がいる場所なら
どこでもネットワークは繋げ
てるって言えばわかるかな?」

「この国はね、これまで何回も
水際で疫病と対峙してきた。
ニュースにならないけど、
港の学校地域がロックダウンする
事も 十年に1回ぐらいあるのよ。
知られてないだけで全国に情報
の網を持っていて初めて見えて
くる国の姿ってあるのよ。」

「まあ、それで 春先の件では海上
航路中に私にも薄く流れてきた
のね。どれだけの緊急性がある
かわからない段階。でも会長に
お願いをしたのよ。」

「私達の地域にある港は、1日に
何十と船がくる。
それを、一旦 止めて欲しい
って。そうしている間に、件の
船内で起きている事がニュース
されて、うちの
寄港を回避できるからってね。」

「そりゃ会長に、何寝言いって
るんだって、言われたわよ。
それに、そこまでの
権限は Pには ないって」

「例え、そうなっても 港なんて
他にもある。もっと震源国から
くる船や飛行機もあるなら、
多かれ少なかれ 蔓延もある。
性急な動きは異質視されるって」

「でも、今、海上の懸念情報を
P保護者からもらっていて、
これまでロックダウンを学校で
してきた歴史もPでは共有して
いる。うちの地域が惨事になる
可能性があるって、」

「何より、県の港には 研究機関が
多い、二次災害の被害の懸念を
訴えたら会長だってわかってる
事案だから、折れてくれたの。」

「もし、会長の動きで 県が
動けば、今過分な行使力を
持っていると見なされる。
会長から、きっと 打たれる
ぞとも警告された。」

「それは、申し訳ないわね。
だって、それは私だけじゃ
なくて、会長もなんだから。
そうなれば、もう生け贄同然で
役員になった私達なんだもん、
すぐにでもお払い箱になる。」

「しかも、P社会からの抹殺を
噂に嫌疑の尾ひれを付けて、
リークされる。ってお土産つき」

「冤罪による籠の中の殺処分、
そうなるって覚悟してたわ。」

「だから、今更、査問会議って
言われて驚かない。」


「ハジメさん、どうして
あの島の あの園に
行った のかって聞いたよね。」


「アタシが かの場所を探した
経緯には、刑務所を出たり
入ってりする、自分のどうしよう
も兄から聞いた話にもよるん
だけど、
自分が、理不尽な嫌疑をかけら
れて糾弾される未来を、
告げられたのもあるのよ。」

「こんな未来を選択するかも
しれないと、告げられた時、
話に聞いた人物が 祈った
島へ行ってみたくなった。」

「スラムで 無縁仏を慈悲で火葬
して、幽閉する国の為に祈る
人物に興味が湧いてね。」

「笑うわよね。
島にいけば 私の薄暗い思考が
晴れるかもしれないって。」

「でも、そんな簡単な
奇跡はなかったわよ。」

『さっきまではね。』