夏休みは境界。公開告白される君と3日間の旅~小豆島・豊島編

小学校の PTAに『事務員』がいる
ような、学校って
どんくらいあるんやろな。

うちが、この小学校PTA事務員に
なって、10年以上になる。

小学校の敷地内に、
PTA室がある学校も、
どんくらいあるんやろ。

役員のカラーなんてのは、
その時々で、熱心な時もあれば
テキトーな時もある。
でも、意外に 『同じ顔ぶれ』が
持ち回りでやってくる。

PTAをずっとする家系が
あるからなあ。

ただ、今の役員は違う。
久しぶりに、
『その家系』じゃない
保護者で作られてる。

その理由は簡単。
その時にPTAをやる人間が
出なかった。

一見よくある話やと思う?違う。
これは異常事態。

だから、あの日に
社協の会長から、
『今回は、かくし球を出す。
ちょうど認知もさせたとこや。』
って、
今の会長を連れてこられた。

この会長はずいぶん前に、
PTA役員を 駆け出しで、
会計から入れられた 奴やった。

その後、立派な会長になる為、
当時の県Pで、『カリスマ』って
言われた会長の所へ
弟子入りさせられたんよ。

これで分かるかな?
ホンマのPTAっちゅーのは
奥が深い。

しかも、
子どもが高校いってるまでが
本丸。やから、
中には里親を何回もして
役員やるのもいる。
驚きやろ?

その会長が、
社協会長の甥っ子を副男会長に
して 投入された。
たった2人からや。

あとは、会長が保護者から
インスピレーションで
副女会長をスカウトして、
彼女の目利きで、
他の役員が作られた。

始め
異常事態のヘルプ役員やったのが、歴代役員群で1番の組織
になったのは 皮肉なもんやで。

副女さんの能力は、
人の発掘力やった。なんせ、
よう人も、子どもも見てる。
あの人ぐらいちがう?

学童で10人ぐらい
バラバラの学年の子どもらの
宿題を一気に見れるのんは。

そりゃユリヤちゃんが
よう出来るはずや。

アタシ、事務員の本来の使い方も
よう心得てる。
アタシらの仕事は、
事務だけじゃないからね。

あと、アタシと同じ裏の
使い方で 監査女さんの質も
心得てる。
これは、アベレージ大きい。
引きが強いのも 能力や。

まあ、最初アタシは
『 監査女さんの能力』なんて、
眉唾やと思っとった。
それが 見事に覆ったんが、
あの事やわ。


悪いけど アタシも旦那も
定年迎える様な年。
今の保護者なんて、
息子や娘らの年やん。
そんなアタシに、
監査女さんは ある時、
言うてきた。

『事務さん、男の子出来てますよ。調べてください。』

いやいや、
何をおっしゃるウサギさんよ。
冗談か?だいたい、
出来る行為を しとらんがな!

それでも、一応
検査薬を試したよ?!
想像もしてないけど、
妄想妊娠もあるかしれへん。
てか、そんなもん 陰性よ。
当たり前や。

アホらしいやろって、
娘に一杯飲みながら 話たら、

「お母さん、もしかしたら
それは、比喩かなんかで、
病巣とか出来てるんかも?
人間ドックいったら?」

まで 言われた。

なんの兆しもないのに、
人間ドックもなあ。って、
思っとったら、ふと
若い頃 ワルしてた時に、会った
占い師を 思いだしたわけ。

今はもうないけど、
昔は『日本の九龍』って
言われた、不夜城ばりの場所が
あって、そこのある場所に
『占い師の占い先生』って
のがいてた。

今は不夜城は更地やけど、
あそこは ゼロ磁場とかいって、
場所がいいやと。
でまだ 居てるって 聞いてた。

久しぶりに、
あっちまで串カツ食べに
行きがてら、見てもらおうかと
思い ついたわけよ。




『あー、あんた。子どもいるね。
しかも、中国に男の子。
間違いない。』

いやいや、何だそれ?!
この占い師、朦朧したか!!

『騙されたと思って、
戸籍調べてみな』

それが結果。
知り合いの弁護士に
付いてきてもらって、
役所で調べたら、
1年前に 旦那が認知した形で、
うちらの戸籍に男の子が
入ってるやないか?!!

目が飛び出た!
なんや!ドラマか!

この いかにも
中華圏の名前の男子は!!誰!
しかも 母親は 中国っておい!

その戸籍写しとって、
旦那に詰めよったら
次の日には、
実家に逃げよった!!

あいつ、
会社の出張で行った空港で
声かけてきた、若い女と
致して、子ども出来たとか
言われて、退職金を
中国の女に全額渡しよって。

マジか?鳥肌やわ。

あげく、アタシと仲の悪い姑に
アタシに追い出されたと
泣きついて。

お義母さん、そいつ国外に
その年で子ども作らされてますよ。って、電話で叫んだった。
泡ふいてたわ。あれは、やった。

そっから、泥沼。
家庭裁判所で 言うことかいて、
アタシのDVで 離婚したいとか
根も葉もない
嘘まで のたまう 旦那。

家庭裁判所で 旦那に
掴みかかって暴れたったわ!
もとワルを 舐めんな!

慰謝料に、
退職金額もらって 離婚したけど。

ほんま、まさかの 熟年期離婚。

考えたら、旦那の実家は
京都のエエとこに
不動産持ってるねんけど、
あーゆーのんを狙われたん
やろう。

アタシには もう関係ないけど。
でも、これ ホンマの話。
世の中 こわいわ。
息子が この話スナックでしたら、
オヒネリに一万円もらったって。
なんやのん!

『事務さん、男の子 もう、
いなくなったんですね。』

協議離婚 出来た日に、
顔あわせて 開口一番、
監査女さんに言われて 思ったわ。

この女、本物やわ。

まあ、こんな人材のお陰で、
今の役員は歴代随一の組織に
なったわけ。

『おおーい、こっち持って
合図したら、一斉に歩調を
合わせて、まわるからー。』

『ナラク』から
男の人の声がする。


舞台の下って 言っても、
山の坂を 上手く使って舞台小屋を立ててるから、舞台は2階ぐらいの高さにあって、坂の底になる
1階が『ナラク』になってた。

昔の人、すごい!

ユキノジョウは、控え小屋の
引き戸をぬいた、窓ヘリに腕を
かけて、ナラクからの大きな声に 後ろを振りかえる。

そんな ユキノジョウに、
よそ見すんなって感じで、

「ユキノジョウ!
おまえもやるか?白波5人男!」

声が すぐ斜め上から 降った。

ユキノジョウが 向き直すと、
白ぬりの 化粧をしている、
カイトが 手のヘラを 見せて笑う。

「やるか!!全然、
中身、わかんないだろー!」

ユキノジョウは、あわてて
否定した。
冗談じゃないってーの。

でも、カイトは
まだ白くしてないアゴを くいっとして、女子達を 見やがる。

キャーキャー 言ってる
女子の 中には、ユリヤが見えて、
ユキノジョウは わざと、
口をゆがます。

「やれば、女子にモテんぞ!
たいてい、次の日に
1人は告ってくるしな!」

カイトの その 言葉で、とたんに
ユキノジョウは、自分の両目が
大きく開いたのに
びっくりした。

最悪だ!!すげー最悪だ!!

「カイト。しょーもない事いうな」

ようやく アゴを 白くぬり始めて
カイトが、悪そうな顔で
アハハって また笑い やがる。

たった半日、一緒に作業しただけのヤツに バレるのは 最悪だ!!


最初、ユキノジョウは
すごく、アウェイな 場所に
来たって 思った。

でも、副女さんの持ってきた
Tシャツの 威力は デカかった
のだ。

「おまえ、どこの子ども会?」

突然だった。

『ボランティアの子達は、ここの
子ども会の人達と、幕張りと
机 出ししてくださーい。』

リーダースタッフさんが、
ユキノジョウ達 ボランティア
や、ここの子ども会や、
青年会とかに、作業を伝えると、
すぐに ユキノジョウは 声を
かけられた。

「神戸。オレは5年だ。」

ユキノジョウは、声をかけてきた
同じ位の男子に答えた。

「オレ6年。ガムテープに、
下の名前 書いて貼っとけ。
幕と机、入れてる倉庫、いく。」

そう言って、ガムテープと
黒マジックを投げてきたソイツの
Tシャツには 子ども会の名前と、
『カイト』ってガムテープが
貼ってた。

中学生なんだろう、お兄さん達。
それを手伝って、
男女混ぜ混ぜで、カイト達と
ユキノジョウ達は 小屋や、鳥居に
机を出していく。


『わざわざ、そろいの Tシャツ
作る意味?そりゃ 着てりゃ、
似たような団体のヤツだって
分かるやんなあ?
人間は、似た外見してりゃ、
心開きやすいし、
ひとくくりになりやすい。
あんたらも、その内わかるよ。
そろいの制服、ジャージ、
うちわ、タオル、Tシャツが
作る、仲間意識ってヤツ。』

そんな、事務さんのセリフを
ユキノジョウは、すぐに
思い出した。

こんなに単純な モノ が、
ユキノジョウって よそ者を
なんとなく、ひとくくりに
入れてくれる 不思議さ。

これか!事務さんの 言ってた事!

「ユキノジョウ!
1人で1個、机もてるか?」

カイトは、ここの子ども会の
リーダー的な ヤツだ。6年だしな。
ユキノジョウは なんとか机を
持ち上げて 小屋に運ぶ。

芝生の階段に合わせて、段々に
作られた 小屋の引き戸を外して、
机を立てる。
ここが 控えになる。

芝生の階段に、虫干ししていた
着物は、副女さんと ユキノジョウの母親達が、表にしたら、
後で、ユリヤ達 女子達が
木の箱に直していく。


この 神様の 場所に ある
昔話な、『かやぶき』の建物は、
農村歌舞伎の 舞台 とかで、

その台本が 昔からずっと残って
るって、カイトに 聞いた。

こんな、山の舞台で出来る演目が
200以上あって、今でも20演目は
するって、驚く。意味わからね。

それより、虫干しの着物は 全部
衣装で、750以上は 残ってるん
だとか。すげー。
そんで、それを教えてくれる
カイトも すげー。

ボランティアに来てた、
おじさんの中には、
『小道具に 元禄時代の鐘が
ふつうに あるって 凄いです!!』って、騒いでた。

それにしても、
着物は たくさんあるけど、
保存が大変なんだろう。
虫がけっこう いてたぞ。
モゾモゾって、かゆくなる。

お昼ごはんに なって、
カイト達が、ユキノジョウ達を
棚の田んぼの、
もっと上にある 取っておきの
場所に連れ行って くれた。

女子達も一緒だから、
ゆっくり上がる。

鳥居の横に、すごい勢いで流れてる山の水があって、
その水路をたどり、上る。

そしたら、ぐっと棚がせり出した
所がある。
えーっと、ほら テレビで見た
外国のホテルの高い場所のプール!
あんな 棚の田んぼのふち!

「ほら、マチュピチュみたいだろ?行ったことねーけど、
大人が言うんだぞ、『日本の
マチュピチュみたいだ』ってよ!」

副女さんがバスで言ってた。

ユキノジョウも 行った事ない
マチュピチュは分からないけど、
すごい爽快で、
まるで
青い 棚の田んぼ に
浮かんでる 雲の気分だ。

ユリヤとアコも はしゃいで、
2人とも 棚のはじっこで、
両手を 大きく ひらげている。

そう!飛べそうなんだ!

ああ、船のはじで手、広げるヤツ
あんな気持ちかもな、、
ユリヤの背中をみてて、思った。


『ユリヤちゃーん、
アコちゃーん!ごはん 食べよー』

女子達の何人かが、呼んでる。
手に 長い木の箱を 持ってるんだ
けど、あれってさ、弁当箱か?

「あの箱って、弁当箱?
デカイなあ。」

ユキノジョウが聞くと、

「歌舞伎んときは、『わりご弁当』食べながら見るんだぞ。オレらは
出るから、昼めしにって、子ども会の母さん達が 持たしてくれた。」

ラーメンの配達の 入れ物が、
木で出来てて、中に 積み木みたい
木の弁当があった。

「台形だ!」

アコが、木の弁当箱の形に
声を上げた。だよな、パズルみたいに、弁当が入ってんだもん。

「いいの?うちは、ここの
子ども会じゃないから、、」

ユリヤが、女子の1人に遠慮して
話してる。あの女子も6年か。

『いいって。ユリヤちゃん達の分は、うちらのお母さん達のん。
お母さん達は、ユリヤちゃん達の
お母さん達と、カフェランチ
するって、喜んでたー。』

そっか。バス停の横にあるお店で、ランチするって言ってたかも。

「わざわざ 古民家カフェでメシ
する事ないかんな、テンション
あがっとったな!」

カイトが、その女子に 声かけて、
ユキノジョウの分の『わりご弁当』を持ってきた。

おにぎりだと思ってたのは、
お酢のご飯を 四角型に ぬいてた。
このお米も、この田んぼの
なんだろうか?
よくわからないけど、
食べると、元気になる 弁当だ。

そんな、大きくないから
ユリヤも食べきれるな。

『トマトと、キュウリ、うりある
から、水路に 冷やしとくなー』

網に 野菜を 入れて、
4年の男子が カイトに叫ぶ。
すぐ、カイトが そっちに
見に行った。
1番上が、下のめんどうを
見るんだってよ。

うり?

ユリヤが ユキノジョウの所に
寄ってきた。

「ユキ君、もっと上に、共同の
洗い場あるんだって、ご飯たべ
たら、
女子はお弁当の木の箱洗うって。」

「じゃあ ユリと、
アコは そっちだな。」

オレら男子は 舞台の装置を
大人が動かすのを 見に行く。
カイト達が、やり方を覚えに行く
からだ。

「どうかな。アコちゃんは、
同い年の男子と 下に行くって。」

え、アコ、あいつ。

「へー、アコちゃん、
『竹のアート』に見に行くんか。
デートやなあ。」

ニマニマしながら、カイトが
戻ってくる。
入れ替わりで、ユリヤは女子に
呼ばれて行ってしまう。

作業してると、あんま一緒じゃないのは、仕方ないかあ。

「ユキノジョウ達、バス停から
下を見たろ?あの下の方に、
芸術祭になったら 竹をつかった
空間ができるんや。
棚田が見えて、ええで。
すぐ見えるとこやから、
中学年でも 大丈夫やろ。」

カイトが教えてくれたけど、
なんだよ アコは、ちゃっかりしてんな。

「じゃあ、オレもユリと
行こっかな。」

隣に座るカイトに、場所を
教えてくれるかと 聞いたら、
ユキノジョウと、ユリヤは
小道具を動かす 係だから、
練習あるって、ダメ出しされた。




『ハイ!!じゃあ、今度は
人が乗って、装置が乗ってる状態で、回します。せーの!!』

ナラクの底から 男の人達の 声が、
聞こえて、ギッギッって 低く音がする。

「なあ、カイト」

そう ユキノジョウが
窓へりから カイトを見ると、

控え小屋で、
白ぬり化粧が 胸や背中にも
終わった カイトが、カツラを
したところだった。

どこかで、女子の声がする。

腰に落として いた、
青紫の着物を たくしあげて、
そでを とおして、
立ち上がった 姿。

今日1日 ユキノジョウと、
一緒にいた 6年のカイトは、
どこかに 消えて

ベンテンコゾウキクノスケって、
ヤツになっていた。



静寂の 境内に

リーーーーンと
幽玄か 音色の 風鈴の声


花の都の 吉田少将がぁ 娘は
東国に さらわれしが
『かの伝説の姫』

壮絶か人生ぃ 如何

清水寺の僧がぁ 姫 に恋し
大破戒するが 長き舞台ぃ

それ 始めの 縁起とは 如何

因果因縁

輪廻転生

諸行無常

因縁の 舞台はぁ
江ノ島 稚児ヶ浦
寄せるる 白波
断崖絶壁

まずはぁ 過去の因縁が 舞台

小豆が島の
農村が 舞台~

雲偏に愛く 波幕
黄昏時に 吹く風揺らぐ
蝋燭の 行灯

始まりますわぁ 幕開け
柏木柏木~

禁断の恋
同性愛
妻帯婚姻 不敬罪
所化と 寺稚児は
恋に溺るが 濡れ場

ああ
今生 相いれぬ 関係ならば
死して 未来に 夫婦にと

出奔 出奔

佇む二人は 稚児が淵
只今 稀代の 心中
秒読みか~

小さき香箱 蓋と身に 分け
蓋を 寺稚児が 左手に
身を 所化に
香箱
蓋と身
互いの名を 認め
起請代わりか

香箱や 愛の証

蓋を 握りしまま
来世で 必ず添い遂げるを 願い

寺稚児 ざんぶと 海へ飛び込む

愛せし 寺稚児
潔し 断崖 投げ出し 落ちる姿
ああ 小さくなり姿

仰天は 所化
荒れる波勢に ぽちゃり消えし
愛おし 稚児

追って 荒海に
いけや所化!今いけ!

が 怖気け 躊躇し
死に遅れ 生き残りし
無様さぁ 所化なぁ

何故に 身投げ出来ぬか
我が 恥の身やぁ

「白菊やぁい」

出奔 寺稚児を 探す声
遠きに 聞こえしを
顔面蒼白
只只 絶壁にて 放心するが 所化

一羽の 白鷺
スイ飛び立つ にて
あれは、なにが 兆しか


あれや、夕暮れに
回るや 人力廻り 舞台

時は流れし 十七年月
現れますは
新清水寺の 境内

桜が 大満開 清水観音堂
花見や花見や 行幸や

憂いの姫は 年十七

出家を 心に 寺門に すがる姫
必死や
止める 腰元達の 情景

揺れる 女衣や 衣装達
柏木柏木~

境内 段幕下がる 島花道を
十七年前
心中
叶わず 修行しし 今は高僧
あの 所化が
弟子も 引き連れ 参り舞台へ

姫の出家 願いを 聞きし
弟子達も 出家を 止めるや
女は罪多しが 故にと はぁ
戯れ言がぁ


姫は 出家の 事情あり

聞けば 生まれてこのかた
左の手が 開かぬ

1つ
この身体や 縁談進まず
断われる ばかり
この身の 故は
前世の罪の せいか
出家にて 願うは
在業消滅

2つ
姫は 殿様の 子女が
悪辣なる者 屋敷に忍び
殿様を 惨殺
家宝「都鳥の一巻」
奪われ
弟をも 殺され
お家は 明日には断絶

悪辣の者に 手籠め受け
身に子さえ 産みし体

出家しは 家族供養をと
血涙の決意が 姫や姿

事の顛末
聞きし 同情の 元所化
今は 高僧
姫の出家に『十念』授けし

『 南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏
南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏
南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏
南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏
南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏』

神聖なりし 仏の御名を 唱え
姫の身 仏に 近けんとす

あれ『十念』の功徳~

姫の左手が みるみる開きか
掌から 出てきたは
前幕にて
身を 滅ぼしや あの君が蓋
愛おし 寺稚児や

我が 名書かれし
香箱の 蓋!

驚愕は 元所化

姫や 愛おし 寺稚児の
生まれ 変わりか

元所化や 今は高僧
姫の 左の手を むんずと掴み

恋か 責任か 執着か
人の心とは 摩訶不思議
所化や 高僧 浮かばれぬ
心の奥の 波の音

ザンザと 泡立ちかけ上がる
高僧の右の手に
香箱の身

2つ 合わ~せて~

ダダンダダン
柏木柏木~

出でたる 黒子が
二人を 七変化か
僧の衣と 姫の衣を 引っ張るや
現れる 前幕の衣装

過去の 因縁
江ノ島は 稚児ヶ浦

元所化、姫稚児
合わせる 香箱を
一羽の 白鷺
スイ飛び立つにて

客の波間に間に
香箱を咥えて ゆらゆら

神場の社へと 消え失せる

因果因縁

輪廻転生

諸行無常

禁断の恋
不敬罪
今生 相いれぬ
死して 来世に 契り

愛の証は
断崖絶壁
死に遅れ 生き残り

只只絶壁

秒読みか
在業消滅


静寂の 境内に

リーーーーン
リーーーーンと
幽玄か 音色の 風鈴の声

夕闇迫る 舞台に
篝火の行灯揺れる
『白波5人男はなあ、天下の
大ドロボウ一味 なんだぜ。』


そう、カイトはいい顔をした。


「白波」って墨で書かれた傘肩に

ザあッッッー!

一斉 花道 の5人組が 客席に
向く

『しらざぁ~
いってぇ きかぁ~せやしょう~』

カイトのベンテンコゾウは
戦隊ヒーロー みたいに ピシッと
そろいの 動きで、すげー、

かっけーーー!!

高い ゲタに、大人の 着物で、
和風の傘と、首に 手拭い かけて

『白波』って 中国のドロボウん
名前なんだって?
なんだよ!
ドロボウって 書いてる 傘持って
言っちゃってる じゃんかよ!

なんだかよー

ユキノジョウが 初めて 目にした
島の 歌舞伎は
くそー!! 夢みたいに チカチカ
した 万華鏡 だった。


「最初 町長がさ、籠に エッサ
エッサって、のせられて 花道を
来たんは オモロ かったなー。」

カイトが、差し入れのラムネ瓶を
ユキノジョウの 顔ん前に 出す。

「あんな籠、時代劇しか 見たこと
ないし びっくりした。あれ、
あいさつ してたの、町長か?
演歌歌手かと 思っとった。」

町長さんは、
あいさつの中で、新型ウィルスの
話とかをして、集まった全員で、
目を閉じて、静かにモクトウと、
祈りをした。

夕方のにおいがして、

ユキノジョウも、世界が幸せに
なるようにと、すぐ後ろの 神様に思った。

出されたラムネ瓶は、
開いた口 から パチパチ音がした。

「いつもの 奉納歌舞伎ん ときと、
ちがう事 ばっかりで オレらも
オモロかったな。あいさつん後の 『三番叟』もあんな 盆踊りみたい
なん、やった事、初めてだー。
芸術祭の特別バージョンだ。」

パチパチのラムネ音を、カイトが
グッと 飲み込んで ぷはーっと
笑う。

ユキノジョウは、あの 猿回し
みたいな着物と 帽子の ヤツら
ねーって 、思い出した。

チョン チョン、シャン シャン

手に楽器や、鈴をならして

足でとる拍子が
田植えを してるみたい。
猿回しの服が たくさん 出てきた。

ここに 住んでる お客さんが、
すごい 驚いて 、笑って、一緒に
座りながら、
手だけ ヒラヒラと 踊ってた。

『所々、オモロイのはさんで、
いっつもと違うて、楽しいなあ』
って、お婆ちゃんが
しゃべってる。


ユキノジョウは、隣の カイトに、

「その後ん 出てきた カイト達は、すげー、カッコ良かった しな。」

降参だって フリをして
正直に言う。

「だろ? オレ1番好きなんだよ、白波5人男。ユキノジョウもやりゃ、良かったんだよ。」

ケラケラって して カイトが言う。
ユキノジョウも、出れば 良かったと 少しだけ 思ったのだ。

だって、左手の 花道から
カッコいい カイト達5人組が
出てきた後、
今度は 右手の花道から
また、5人組が 出てきたのだ。

後からの5人組は、当日の
飛び込み組で、これもお客さんに ウケにウケた。
飛び込みなら、ユキノジョウにも やれたと 残念だった。

それぐらい、カイト達は
良かった。

「そうだよなー!あれなら、次の日 、そりゃ 告られるな。」

ユキノジョウは、ラムネを飲み
干して、コロンと 中の、ビー玉を鳴らす。

「だろ?あとは、中学組がやった、『手習い』の車引も 人気あるしな。次は、あれをやりたい。」

カイトは、ビー玉取れないだろ?って顔をして、ユキノジョウから瓶を取り上げながら 言う。

「車引って、どれ だったっけ?」

「あれだよ、3人出て来て、
バーって 着物のそでを
黒子が、広げるヤツ!」

「おおー!あれか!ちょうちょ
みたいに なる!ハデなヤツ!」

たしか、
エンギ?がいい三つ子が
お互いに 敵対するとこの 牛の
専属運転手してて、出会い頭に
ケンカして、見栄はりあいする
話だって、副女さんが教えて
くれた。

意味は あんま、わかんないけど、

紫と白のチェックの着物が、
羽みたいに バーって広がるのんと、三つ子の動きが ピタッて
あって その ポーズが
やっぱ、かっけーかった。

「でも、あれだな。ユキノジョウは、二人でシラサギと香箱やれたしなー。ヤクトクって言うんだぞ。」

カイトは、そういって そのまま
ひっくり返えった。
神様の社の前も、芝生がある。

「オレ、黒子やっただけだぞ。」

ユキノジョウも、芝生にひっくり
返えると、背中がヒンヤリする。

社の行灯の明かりが 頭の上で、
虫を寄せ付けながら、
チロチロ燃えてる。

ユキノジョウと ユリヤが頼まれたのは、最後の場だ。

生まれかわった お姫さまと、
お坊さんが、もう1度 出会う話。

姫さんの手から 香箱のフタが
出て来て、
お坊さんと、前世の姿に なった
お姫さまが 合わせた香箱を、
シラサギが くわえて飛んで いく
シーン だった。

ユキノジョウが、シラサギの
作り物を、
ユリヤが 香箱を
釣竿で つって、
お客さんの中を 走りぬける。

「でも、あっこの場面。不思議
だったよな。風鈴の音がしてさ。」

カイトは、出番が 終わって、
衣装のまま 脇で 見ていた。
花道の 幕がめくれて、
カイト達の 顔だけ 出ていて、
笑えた。

「オレ、シラサギ
動かしてたけど、時間、
止まってるみたいだった。」

ユキノジョウは、
ユリヤと 二人並んで、
手を つなぎながら、
真ん中を キンチョウしてたけど、
抜け出て 神様の場所に 行く。

お客さんが 誰もいないぐらい
静かで

リーーーーン
リーーーーンって、音だけ が
頭と 境内 に ひびいてる。

舞台の お坊さんと お姫さまは
そのままで 話は
終わりだけど、

まるで、あの 二人の魂に
ユキノジョウと、ユリヤが
代わりを
次いだみたいに
お客さんの波に

ユキノジョウ達は 消えた

神隠しにあう って
こんな 空気なのかも

ユリヤのこえ が 耳元にして。


「ユキノジョウ達の背中、みんな
見てて、気がついたら、紙テープ
投げてさ、結婚式みたいだったぞ」

カイトは ニカッと 悪い顔して、
ユキノジョウを 見る。

あの後は、
お客さんに エンディング用に
配ってた、紙テープを
みんながなげて、
紙吹雪が 舞台に降って、

終わりの音楽と
三番叟の猿回しのヤツらが踊って出て来てたから、
お客さんも、
舞台の役者も
みんなが、
好きずきに踊って

終わった。

「二人の 共同作業 だろ?」

カイトが、体を起こした。

ユキノジョウも、顔だけ、
機嫌を悪そうに 起きて、

「、、あれ めちゃ BLの話だろ。
ドキッてするよな。」

カイトに言う。

「男子と女子がかわって、生まれ
かわって、近くにいなくてもって 話だよなー。
歌舞伎だと よくあるけどな。
本当に あった話とかで 台本、
つくられるっていうしな!」

ユキノジョウは、
カイトの 言葉に おどろいた。

ベンテンコゾウをしてると、
そんな 風に
大人みたいな 話もでてきて、
練習とかするのか?

カイトが 1個しか
学年かわらないって、ウソだ。


舞台の片付けは、
大人達で、すっかり終わり

舞台に近い芝生に、
女子達は 座って しゃべってる。

配られたラムネの 空き瓶を
あずかりに 行くぞって

まるで、肩に傘を
広げてるみたいに、

カイトは 立ち上がる。

ユキノジョウは、
1人 舞台の方へ あるく
カイトの背中を 見たまま
すぐ 立てない。

たった1つの階段は
デカイ。

ユキノジョウの 頭の上で
燃えてた 行灯の火が
風で 消えて、こげた
においがした。


さっきまで、芸術祭で
島を回っている お客さんや、
来賓さんとか、ヘルプの
ボランティアリーダーさんとか、
ワチャワチャ居てた。

今は ここのお手伝いさん、
子ども会、青年会、保存会さん
ユキノジョウ達ボランティアと、
ここのボランティアリーダーさん

だけが、残って 作業を
終わらせてる。

『お疲れ様でしたー!
ボランティアの皆さん!
よければ地元の方が
お疲れ様会で、食事を公民館に
用意して下さってますので、
ぜひ食べて行ってくださーい!』

ボランティアリーダーさんの、
言葉に、大人の男の人達は、

おおー!!って、声をあげている。

「ユキノジョウ。大人はすぐ
公民館行くけど、オレらは
ちょっと
舞台ん裏、見てく。
ユキノジョウも来るだろ?」

ユキノジョウの肩を、後ろから
チョイチョイと呼んで、カイトが
舞台の脇へ消えた。

一瞬、副女さんや 母親の顔を
見て、舞台を指さすと、向こうも
うなずいた。言いたいことが、
わかったんだろう。

女子達といた、ユリヤの肩を
たたいて、舞台を指さすと、
やっぱり うなずいた。

『この紐を引っ張ると、
幕が降りて 場面が変わる。
どんどん、場面が来たら、
降ろす感じな。』

ユキノジョウ達が、カイト達に
合流すると、舞台の 説明を、
お兄さんが している。

『こっちの紐をゆらして、
雪とか紙吹雪の籠を動かす。
紐を引っ張るだけで、操作
できるようにしてるんな。』

舞台のそでは、ユキノジョウが
思うより広くて 驚いた。


「あの 兄さんなあ、
別んとこの人やったけど、
ボランティアでここの歌舞伎
やるようになって、そのまま
住むようになったんやぞ。」

カイトが、ユキノジョウの耳に
小さい声で 教えたけど、どうやら お兄さんには、聞こえたらしい。

『なに?カイト。お、新しい
ボランティアの子かぁー。
そう、俺は、もともと
地元の人間じゃないな。』

ちなみに、
ユキノジョウとユリヤ以外は、
ここの子ども会の子達だ。

だから、お兄さんが、
ユキノジョウ達に
声をかけてくるから、思い切って
聞いてみる。

「ここの舞台を やりたいから、
引っ越してきたんですか?」

お兄さんは、ユキノジョウを見て

『君、今日、シラサギ動かし
てた子やね。どうやった?
歌舞伎、面白かった?』

と、反対に聞いてくる。
それは、反則だぞ。
ユキノジョウは、少し考えて
ユリヤも見て

「よく、わからないです。歌舞伎も初めて見ました。カイトが出てるし、お手伝いもしたから、
オモロかったんだと思います。」

正直に言った。
ちょっと カッコ悪いけど。
仕方ない。

『それって、いつもと 違う自分や、いつもと違う世界に 何か発見があったような気がして、
ちょっとびっくりしてる?』

そーくるのか?
うーん。まあ、
そんな気がするから、
ユキノジョウは うなずいた。
でも、そうなのかな?ぐらいだぞ。

『少年時代の夏休やなぁ!!
良かった。手伝ってもらった
カイが あったなあ。
なあ、カイト。』

そう、お兄さんが カイトの頭を
なでると、カイトは よく
分からないって顔を している。
だよなー?

『あとは、奈落に降りて、
回り舞台の底を見て行って
くれるか。
みんな 身長伸びてるな、
回し棒に手が掛かるか、見とき。』

ウオーイって、男子と女子は
下へ降りて行く。
そうして、
お兄さんが ユキノジョウ達を、
ここ!って、
舞台の 真ん中に 呼んで
ドカッと座る。

『俺な、東京の小さい
劇団で役者してたんよ。』

舞台の真ん中から まっすぐ前を
見ると、神様の場所が見える。
夏だから、7時になっても
まだ明るい。

『君らと同じようにボランティアで、ここの農村歌舞伎を手伝って、そのうち舞台に出るような、
ボランティアをして。最初は、
役者の経験になれば
ぐらいでお手伝いしてたなぁ。』

お兄さんは、舞台に手を ついて、
舞台から 投げ出した足を、
ブラブラさせた。

ユキノジョウ達に話すという
より、独り言みたいに。

「東京から、島に引っ越す
のって、勇気いりませんか?」

めずらしく ユリヤが口を開いた。
しかも、引っ越すとかいう。
どういうつもりだ。


『勇気?!いった!凄くいった!
でも島にきた。へんだろ?
仕事でもないのに、島で 歌舞伎をする 為に こっちに住むなんて?』

大人達はもう、
公民館に 行ってて、
ナラクから聞こえてた
子ども達の声も

今は消えていた。

『それでも この舞台に1回立つと
思ったんよ。ずっと自分が
役者する為にバイトして、役者を
やりたい自分が 生きる意味
全部やった。でも、ここに立つ
のは 神さんに 見せる為なんよな』

涼しくなると、
虫の声が 聞こえる。
ふと、ユキノジョウは
お兄さんの声を聞きながら
思う。


『神さんと、自分。それだけに
なる。凄い 生かされてるって、
満たされるんな。あんまり、
わからんかもやけど、大人に
なって 俺の言葉、
思い出してくれたら いいよ。』

お兄さんは、そう言って笑う。
ユキノジョウは まじまじと
笑う お兄さんの 顔を 見つめた。

お兄さんの首には
まだ 姫さんの白粉が残っていて、

隣に座る
ユリヤの首は
いつもなら 赤くなるのに、
めずらしく ふつうに、

日に焼けていた。

大人になれば、
お兄さんの 言葉がわかるのか。

ユキノジョウは

まだまだ、自分の気持ちとか
思う事が、言葉にならない。
大人に なれて ないからかー。


『ユキノジョウー、
そろそろバスに乗るって!』

ユキノジョウの母親の声が聞こえて、アコが舞台に顔を出した。

「お兄ちゃん、時間だよ。」




小豆島。

『この紐を引っ張ると、幕が
降りて 場面が変わる。どんどん、
場面が来たら、降ろす感じな。』

子ども会のガキ大将=カイト達と
ボランティアで来た、
男女の小学生は、街の子っぽい。

農村舞台 装置の説明をする。

『こっちの紐をゆらして、
雪とか紙吹雪の籠を動かす。
紐を引っ張るだけで、
操作できるようにしてるんな。』

ボランティアの男の子は、
舞台裏に驚いている様。

もう何年になる?
東京から初めて、島に来てから。

『 兄さんなあ、
別んとこの人やったけど、
ボランティアでここの歌舞伎
やるようになって、そのまま
住むようになったんやぞ。』

カイトが、
ボランティアの男の子に
小さい声で 教えているのが
聞こえた。


かつて役者600人、
歌舞伎の掛小屋、
境内簡易舞台を入れると
最盛期150は 歌舞伎が見れる
場所が 島あったと言うのには
驚きだ。

テレビがない時代、
まあ、今も歓楽街なんてない島。

娯楽として
歌舞伎への注目度は 想像できる。

同じように、近くの 淡路島なら
文楽や 映画館なんていうのも
島には独自的に
多く小屋が並んでいたらしい。

『なに?カイト。
お、新しいボランティアの子
かぁー。そう、俺は、もともと
地元の人間じゃないな。』

カイトが こんなに、
ボランティアの子どもに 慣れる
なんて珍しい。

そして、
その男の子は聞いてきた。

『ここの舞台を やりたいから、
引っ越してきたんですか?』


どうして、島に歌舞伎が
盛んになったのか?

他の地域と島。
突出しての 違いは、

海だ。

伊勢参りが、
藩の移動できる、
唯一の理由になる 江戸時代。

全国 から伊勢に旅行する人。
伊勢から、帰路に帰る人の賑わい

天候が崩れれば、島への船は
出なく、足止めをくらう。

島の人は、どうしても
大阪で 船待ちになる。



『君、今日、シラサギ
動かしてた子やね。
どう?歌舞伎、面白かった?』


大阪は、上方歌舞伎だ。
船が出るまでの
人数が多くても 時間を潰せる
そんな場所だったのだろう。

歌舞伎に魅了された島人。

人気は瞬く間に広がり、
最初は、上方一座が島にくる。

『よく、わからないです。
歌舞伎も初めて見ました。カイトが出てるし、お手伝いもしたから、
オモロかったんだと思います。』

そう!自分も この島で、
歌舞伎を演じて はまった!

島人も だんだん
振付師なんかを呼んで、
自分達で、演じるようになった。

もしも、
一座を招いての公演だけなら
ここまで 農村歌舞伎は
残らなかったのでは?

いや、
奉納神事だった事も大きいはず。

舞台で立つと感じる。
人ではない
畏怖する 存在の眼差しを。

『それって、いつもと違う自分や、いつもと違う世界に 何か発見があったような気がして、
ちょっとびっくりしてる?』

捧げモノ。だからこそ、
大事にもしたのだろうか。

着物で500以上
かつらなら 90ほど

歌舞伎の根本は750は 残る。

まるで、時代劇にある
大黒帳のような 根本=台本。
あるだけでも凄い事だ。

古い時代文字を、
懸命に 読み解いて、
いまも台本を
起こす作業をしている。

今はやらないような、
古い演目も残る。


『少年時代の夏休やなぁ!!
良かった。
手伝ってもらったカイが
あったなあ。なあ、カイト。』

人の生きる時間なんて、
何があるか わからない。

戦争中、
軍服を着た 歌舞伎なんてのも
都市部では あったらしい。

次第に、娯楽は贅沢。
歌舞音曲なんて非国民な流れに
なって尚、
島の歌舞伎は 当時の知恵で
脈々と残された。


奉納神事として、
兵の壮行会の慰問だ。
あくまで、奉納神事の歌舞伎だ。
理由をつけて。

四苦八苦で
島の歌舞伎を存続させた
歴史を 聞いた。


『あとは、奈落に降りて、
回り舞台の底を見て行ってくれ
るか。みんな身長伸びてるな、
回し棒に手が掛かるか見ときな。』

そう、言うと
ウオーイって、子ども達は
男の子も女の子も
下へ降りて行った。


そうして、
さっき 聞いてきた男の子達と、
カイトを呼んで
舞台の 真ん中に ドカッと座る。

舞台の真ん中から
まっすぐ前を見ると、
神社が見える。

夏だから、7時になっても
まだ 明るい。

『君らと同じように
ボランティアで、ここの
農村歌舞伎を手伝って、
そのうち 舞台に出た。この
舞台に1回立つと思ったよ。

ここは 神さんに
見せる為の舞台 なんだって。』


だから、
台風がきても、嵐の中
観客が1人もいなくてもやるのだ

『勇気?!いった!凄くいった!
でも島にきた。へんだろ?
仕事でもないのに、
島で 歌舞伎をする 為に
こっちに住むなんて?』

舞台に手を ついて、
舞台から 投げ出した足を、
ブラブラさせて、答える。

ここには、演じる事の
本来の意味がある舞台だ。

島の暮らしは、
東京とは 違う。
せめて高松市とかでも
移住は良かったとかもしれない。

じつは 高松にも
茅葺き舞台があって、
小豆島の土庄町小部地区が
所有している。

そこでの 舞台でもいいの
かもしれない。

大人達はもう、
公民館に 行ってて、
ナラクから聞こえてた
子ども達の声も

今は消えている。

『神さんと、自分。それだけに
なる。凄い 生かされてるって、
満たされる。あんまり、
わからんかもやけど、大人に
なって 俺の言葉、思い出して
くれたら いいよ。』

きっと歌舞伎だけじゃない。
人の数自体、
減少していて、
この島の人口も 同じくだ。

現代には 野郎歌舞伎だが、
本来の女歌舞伎や、若衆歌舞伎へ
逆行する
後継の歩みが もう地方では
出て来ている。

『お疲れ様でしたー!
ボランティアの皆さん!
よければ地元の方が お疲れ様会で、食事を公民館に用意して
下さってますので、
ぜひ食べて行ってくださーい!』

今日、
この農村歌舞伎に
かつて 自分が魅せられた 様に

この男女の小学生の心に
種が 蒔ければ 有難い。

涼しくなると、
虫の声が 聞こえる。

そんな風に 思っていると

『お兄ちゃん、時間だよ。』

少女の顔が、舞台に乗った。


新型 ウィルスが
世界を揺るがす中、懸かる雲を
拭うがごとくに、

歌舞伎界の頂点『大名跡』が
誕生した 。


「さて~、襲名公演は 別としてぇ、今1番、チケットが取れない
歌舞伎公演を
ご存知でしょうかぁ? 皆さま?」

ハジメは、ゲストを連れて、 今
農村歌舞伎舞台に来ていた。

「答えは~、日本で最古の芝居小屋で、高松にある 金丸座で行われる『こんぴら歌舞伎大芝居』なん
ですよ~。意外でしょ?」


ゲストとハジメは、
舞台の1番後方、
奉納舞台の社の前、石段に陣。

わざわざ
低い折り畳みの 椅子 持参だよ~。

本来、秋の奉納舞台だと、
このお社に 提灯が下がって
るんだよねん。

きっと 桟敷歌舞伎は
初めてだろうなぁ、ゲストさん。

秋奉納舞台なら、
夕方から始まり、
闇夜に、社の提灯が、
神の在置を 知らせ 灯る。

そして
舞台の、茅葺き屋根 かたわら、
ぽっかり 秋の月が 浮かぶのだ。

ハジメは、ふと
社を振り返る。
提灯はない。

「皆さまならぁ いつもは、
銀座や京都、大阪で 観賞される
歌舞伎でしょうかねん~?」


いくつかある 歌舞伎の大名跡。

それでも
30ほどの一門の中、約300人の
歌舞伎役者のトップの名跡。

江戸歌舞伎の 創始家であり、
『荒人神』『千両役者』『劇聖』
を生んで来た家は
あまりに 有名だ。

その襲名は 大きな話題に。
『歌舞伎』が 今回ひときわ、
海外ゲストの興味を引くことに
なり、芸術祭の企画公演の観劇を
希望されたわけ~。

ハジメは、目の先で 始まるで
あろう、舞台の演目表がわりの
団扇を、指さす。
団扇には鈴?が ついている。

「この 農村歌舞伎は、役者から
裏方の 全ぇん部を、住民がやる
んですよ~。
西日本を 代表する 歌舞伎に
よる伝統神事でもありますねぇ。

とくにぃ、この茅葺きの 寄棟造り
舞台は、先ほどの 金丸座を
参考に建てられて、回り舞台や、
スッポンまであるんですよん。」

そうなんだよぉ、
昔は 牛に引かせてだよ!
舞台を回していたって!
ビックリだよねん~。

ハジメは、改めて演目団扇に
視線を落とす。

「今回はぁ、奉納舞台とは別の、
芸術祭の企画公演みたいですねぇ。
今でこそ、高尚な芸能の代名詞で
すけど~、出雲の阿国『かぶき踊り』から始まった 歌舞伎です
からねぇ。

もとは、当時の事件や話題。
ワイドショーの再現ドラマ。
あ、あのスカッとする話の
バラエティーとか?
『ザ・庶民娯楽』だったのが
明治までの 歌舞伎ですよぉ?

それこそ
『長屋で男女が逢瀬を憩う』
なんてぇ、生活感ある色も 歌舞伎のシーンに多いのですけどね?
今の劇場だとぉ、話と舞台の大きさが、合わないのですねぇ。

大劇場でやると、間延びするんですよ、だから セリフと動きが
そのままだと、合わない。

じつはねぇ、こじんまりした
小屋が本来、歌舞伎の面白さが
良く 出るんですよぉ。
臨場感ですかねぇ?

だから、金丸座は、演者も客も
好む小屋なんでしょう~。
そういうわけでぇ、

今日はぁ、『芝居』語源、
『芝の上に居る』のごとく、
芝生に座って、江戸から続く、
農村歌舞伎を楽しんで
頂きたいですねぇ~。」

そう、開演前の口上を切って
ハジメは、

スタッフの、ヨミに後を預けて
同じくスタッフのシオンが
あいさつに行っている、
芸術祭企画委員の元、
社横の小屋に、
顔出しに立ち上がった。


銀河を走る
電車みたいに、
日が暮れた 棚の田んぼを
島のバスが 上がってきて、

ユキノジョウ達は
バスに 乗っている。

『来年も こいよ。虫おくり
とか、今度は やろうぜ!』

カイトは
ユキノジョウに、中山の行事を
いくつか 教えてくれた。

例えば、
秋の歌舞伎の 後には、
今日の 昼みたいに 芝生の階段に
キモノを干すみたいだ。

『「どぅやぶつ」って
言うんだぞ。キレイな衣装が
いろいろあったろ?』

そうカイトは言ってた。

神様の場所で ある行事 なら、
絶対、カイト達は あそこに
いるから、
また 会えるって 言うんだよ

ユキノジョウは、
暗くなる バスの外を 見つめる。

ふと、ガラスに 隣のユリヤの
顔が 映ってるのに
気がついた。

「なあ、ユリは また、
ここに来たい?」

1日、男子と女子に 別れて
ボランティアを していたから、
本当に、ユリヤと いるのが
久しぶりに 思えるし、

バスが 大きく動くと、
自分の腕に、ユリヤの腕が
あたるのも、うれしい。

オレも ユリヤも、
腕が 焼けて ほてってる。

「うん、来たい。
教えてくれた。虫おくりの日とか、秋の舞台とか、屋台がでるって。」

なんだ、女子も おんなじ事
言ってたのかよ。

少し。日焼けした顔を、
ユキノジョウに向ける、ユリヤに

「そっか。ユリが 、、来たいなら、
オレが また 連れていくな。」

ちょこっと、ドヤ顔をして
また、窓の外を見て おいた。
映ってる ユリヤがうなずいてる。

そっか。そっか。
窓の自分がの口が
上がってた。



ユキノジョウの住む街は、
どっちかといえば、都会よりだ。

港も山も あるけど、
夜も明るいし、コンビニばっか
あるから、遅くまで 子どもは
歩いてる。

『ユキノジョウ達は、
いいよなあ。遊ぶとこ いっぱい
あるだろ?ここだとさ、
芸術祭ないと、見に行くとこ
ねーし、デートもできねー。』

カイトは、そんなこと言ってた。
ユリヤの向こうに、寝てる
アコを、ちらっとユキノジョウは
見てみる。

アコ、同い年の男子と、
帰ってくるのん、遅かったよな。

『ユキノジョウ見たか?
坂手港んとこの ミラーボール?
あとさ、井戸の神社とか。

他の港にもアートってやつ
あるだろ? あーゆのんさ、
芸術祭なると、
だんだんふえたり、
その時だけ 店ができるだろ?
それを 見たりする
ぐらいしか、ないんだよなー。』

なんとなく、
カイトが 言いたい事は、
ユキノジョウにも わかった。

でも、それは
反対に、ユキノジョウ達に ない
モノ だとも、今日は 思った。


オレ達んとこは、
毎日が、おんなじで、
そのまま 何年しても、
周りに見える世界は かわらない。

ある日、あんな ヘンテコが
現れたりしない。



「ねぇー、副女さん。
今日って、泊まるとことか、
ご飯どーするの?」

前の 2人席にいる、
ユキノジョウの母親が、隣の
副女さんに、予定を聞いている。

日焼け止めしてても、
さすがに、母親達も 焼けたな。

「会計女さんっ、今頃聞く?
行き当たりばったりだなあ、本当。
明日早くに、次の島に行くから、
今日は 船が出る、土庄港の近くで、泊まるよ。
ご飯も、宿の近くに、
スペイン料理を 予約したから。」

「スペイン料理ってなに?」
「知らない」

2人席で話すのが、聞こえる。

始めは、暗くなった 山の中を
走っていたバスが 、
少し町っぽい道を走りだしてた。

気がつくと、たまに、
夜の海沿いの道を 通ったりする。

「?!」

ユキノジョウの肩に、
やわらかいけど、汗もかいた
髪が、のっかった。

「ユリ?!」

肩の頭に、声をかけたけど、
返事がない。

あたまり、肩を動かせないから、
隣をのぞけないけど、
ななめ下にある、ユリヤのヒザに
アコの頭が のっかってるのが
見えた。

ヤミに、重い、、。
2人分の重みが
ユキノジョウの肩に かかるけど。

「まあ、いっか。」

とりあえず、
肩にのっかるユリヤの髪に、
スリスリと 何回も ほおずり
しておいた。

たまに、
夜の道のカンバンに、
『ようかい美術館』とか、
『迷路のまち』とか
なんか へんな文字が 見えて
気になったけど、

肩にのっかる髪ん においを
かいでると、
どうでも よくなった。

あれ? そういや、
島のバス、ディスタンスって
どーなってんだ?
「ハジメオーナー、お茶の用意
できましたよー。
淹れさせて もらいますねー。」


そう言うと、シオン君は、
慣れた手つきで、中国茶を淹れる

中国茶器で、丁寧にお手前を
ハジメの目の前で、披露して
くれるのだ。

こう、小さな 急須に
高く まるで 虹を かける
みたいに、
お湯を 注ぐんだよねぇ。

どうやら、お茶請けは、、、
オリーブ?!

「これは~、オリーブの実で
いいのかなん?」

鮮やかな
グリーンのオリーブは、
艶っとして、
みずみずしく見えるから、
オイル漬け じゃないよねん~。

「塩漬けオリーブですよ。
珍しいですよねー。でも、
本当は、新漬けって 熟れたて
オリーブの浅漬けが
欲しかったんですけど」

シーズン じゃないんですよねー。
って、苦笑して
中国茶葉の薫りを
クルーザーに 孕ませる。

相変わらず、
シオン君の美味しいものセンサー
万能だよねぇ。

「ねぇ、後輩ちゃん。
この茶葉って 何?なんだか
花の香り?
あ、キンモクセイよね?」

ヨミ君が 錨の細工が ついた、
眼鏡の ツルを 指で上げる。

「これは、『黄金桂』って茶葉
ですよー。ヨミ先輩、ご名答!
キンモクセイの香りから、
ついた 名前なんです。」

そう 手を拍手させながら、
シオン君は、黄金色をした
お茶を前に、置いてくれる。

本当に、金木犀の 香りするよ~。

今クルーザーにはぁ、
ギャラリーオフィスの人間だけ
あ、クルーザーの運転手もだねん

2組のゲストは、小豆島に
そのまま滞在する為、
下船したのだよん。

もともと、直島のホテルにある
クルーザー桟橋から
連絡頂いての乗船ゲストなんだ~

初めてのゲストもいたけどねぇ。
意気投合~。ボクの気持ち汲んで
くれる いい人だったよぉ。

それに、お買い上げぇ
有り難うございますだよん。

『新しい青』にまつわる
話をしたら、小豆島にね
残るって なったのだよ~。

明日はね、小豆島八十八遍路の
景勝を堪能するってねん。
オススメした
のが、ボクだからなんだけど~

お遍路して 願掛け叶うと
いいと思ってさぁ。

また芸術祭中に 会えたらねぇ
お遍路の感想を聞いてみよう~

小豆島はぁ、
芸術祭のアートも 見所だけど
古からある祈り場は 凄い。

ここは、中国の敦煌か?
はたまた、バーミヤンか?って
眼を疑うぐらい
それはもう、信じられないぃ
光景が~。いや、奥深い島だよぉ

撮影禁止だからねぇ
どうしても メディアに出ないし
認知度が 低いんだよねん。
それが 残念なような~
穴場秘された場でね
安心なようなぁ、、、複雑。


夜の潮風に吹かれ
クルーザーデッキに、花の香り。

「農村歌舞伎、試行凝らして
あって 面白かったですよね 」

シオン君は、2煎目を急須に
淹れるのに、再び高く お湯を
掲げながらも、おしゃべりだ。

「とにかく全員が 主役って感じ? 三番叟が何人も出てくるのもね。」

ヨミ君は、ちゃっかり 2煎目を
貰う気 マンマンだよね~。

「あ、でも!たしか
どこかで、三 番叟姿で盆踊り
する 地域ありますよ!」

「え、そんなとこあるの?!
面白い。一晩中盆踊りってとこも
あるのに、三番叟だらけって。」

うん、ヨミ君が 驚くのもわかる。
だよね~。
しかし、あの歌舞伎の演出。
なかなか 粋でぇ、深い思考を
感じたよねぇ。

「まさかねぇ、桜姫の最初の場を
クローズアップさせて持ってくる
なんてぇ、目から鱗だよん。」

もちろん、ボクも2煎目頂くよん

「長い話です からね。本来は、
本当に 序盤の動線と 場面を、
あんな風にすると、今風ってゆう
か、、
後々 けっこうゲスい内容になる
のが、嘘な 幻想さ でしたね。」

ヨミ君は、何やら お茶を見つめて
感想を呟く。

「あの話の タイトルを、そのまま
お約束で 終わらして 本題に
行くんだよ 本来はねん。」

そう、
あの話は、歌舞伎の、というか
当時のゴシップを お約束で、
知っているのが、前提から
始まる 話だ。

「そうなんですよ! 本来は
タイトルを 聞いただけで、
あ、あの事件がベースね!って、
ピンとくるって話 なんです」

当時の人間なら、
あ、あの話ねーになるけど、
何百年たった ボク達には
わからない ワイドショー。

1つは、関東の御家騒動。
家宝を盗まれて、当主と双子の
息子が盗賊に惨殺された事件。

もう1つは、
初演される十年前の事件
関東で、京都の公家出身と
詐称する遊女がいた事件や

ある 遊女の正体が
日野家の姫御前 だったという
当時賑わせた スキャンダルだ。

この2つの事件を
『ご存知、例の話を元に』と
タイトルにしているからこそ、

物語の序盤に お決まり場面だけ
それで観客には、お約束が
頭に浮かび、話に入れる。


「これって、今の流行りの話に
似た流れ!!って、途中で
思ったんですよー。
どう 思いま す?オーナー?!」

えっ?話が見えないよん。
シオン君?そんな かぶり付きで。

「あれ?今の流行り?確かにぃ、
この話は、初演から大分長く寝か
されて、昭和に復活した本だよ。

それで、最近は やたら、
現代劇や映画とかで
上演してるけどぉ~」

え?ヨミ君?何?残念そうな
顔で、ボクをみるのん!!

「後輩ちゃんが、言いたいのは、
最近のライトノベルの傾向との
比較ですよ、オーナー。」

最近の、ライトノベル、、、

「今、書店で幅を広げてる分野、
知りませんか?悪役令嬢や、
勇者とかの異世界モノですよー!

やたら、長いタイトルとかで、
そのタイトルだけで、中身の予想
が出来るんです。しかも、
お決まりのテンプレがあって。

悪役令嬢は 婚約破棄 されて、
急に 異世界に 飛ばされ聖女
とか、勇者とか。現代スキル
を、チート能力に 転換して。」

あわわ~、なんだかイキオイが~

「後輩ちゃん!わかる!わかるわ
本当だわ!歌舞伎のお約束設定
と、ライトノベルのお約束設定。
最後、ざまぁするあたり!
タイトルに 設定を匂わすね!

あら、なら時代劇もそうかも?
え、サスペンスもそうねぇ。
出てくる温泉地までわかるし。

でも、歌舞伎が 如実かも。
凝縮させた 世界観が
非現実で華やかさを出すとこ。」

う~ん。なるぼどぉ。
クールジャパンカルチャーで、
そんな事になっていてぇ
そこに 日本人の嗜好傾向が
あると~。

「そう考えると、『タイトルだけ
で、内容がわかる』っていうのは
『てっとりばやく、無駄なく、話
に どっぷり 浸かりたい。』と
いう傾向で、昔っからの 日本人
の気質 なんですかねー。」

シオン君は、3煎目を 淹れて
口にしている。

明らかに、お茶の香りが 変化した

船はゆるやかに、
夜の海を 次の島へ 走る。
遠くに 漁火も 見える。
イカでも 釣るのか。

デバイスが 変われば、
書式も変わる。

5年もしたら、今の常識も変わる

その証拠に、旅行鞄に マスクを
入れるなんてぇ、海外ゲストは特に 考えも しなかったよねん。

たまに、ハジメは思う。

素材としては、
何百年も残る、残ってしまう
そんな 科学の素材が 日常ある。

そんな中で、自分の仕事は
何百年も先に、何かを残す
それに、値するような 仕事が
出来ている だろうか?

「なのにぃ、気がつくと、
人間の 本質ってぇ、
あんまり進歩ないっ て、
ことなのかねん? なんだか、
嫌になるほど、 笑うね~」

まだ、デッキで 話に花咲く
女性陣を 横に、ハジメは

次の島影を、タレた瞳に捉えた。