『白波5人男はなあ、天下の
大ドロボウ一味 なんだぜ。』
そう、カイトはいい顔をした。
「白波」って墨で書かれた傘肩に
ザあッッッー!
一斉 花道 の5人組が 客席に
向く
『しらざぁ~
いってぇ きかぁ~せやしょう~』
カイトのベンテンコゾウは
戦隊ヒーロー みたいに ピシッと
そろいの 動きで、すげー、
かっけーーー!!
高い ゲタに、大人の 着物で、
和風の傘と、首に 手拭い かけて
『白波』って 中国のドロボウん
名前なんだって?
なんだよ!
ドロボウって 書いてる 傘持って
言っちゃってる じゃんかよ!
なんだかよー
ユキノジョウが 初めて 目にした
島の 歌舞伎は
くそー!! 夢みたいに チカチカ
した 万華鏡 だった。
「最初 町長がさ、籠に エッサ
エッサって、のせられて 花道を
来たんは オモロ かったなー。」
カイトが、差し入れのラムネ瓶を
ユキノジョウの 顔ん前に 出す。
「あんな籠、時代劇しか 見たこと
ないし びっくりした。あれ、
あいさつ してたの、町長か?
演歌歌手かと 思っとった。」
町長さんは、
あいさつの中で、新型ウィルスの
話とかをして、集まった全員で、
目を閉じて、静かにモクトウと、
祈りをした。
夕方のにおいがして、
ユキノジョウも、世界が幸せに
なるようにと、すぐ後ろの 神様に思った。
出されたラムネ瓶は、
開いた口 から パチパチ音がした。
「いつもの 奉納歌舞伎ん ときと、
ちがう事 ばっかりで オレらも
オモロかったな。あいさつん後の 『三番叟』もあんな 盆踊りみたい
なん、やった事、初めてだー。
芸術祭の特別バージョンだ。」
パチパチのラムネ音を、カイトが
グッと 飲み込んで ぷはーっと
笑う。
ユキノジョウは、あの 猿回し
みたいな着物と 帽子の ヤツら
ねーって 、思い出した。
チョン チョン、シャン シャン
手に楽器や、鈴をならして
足でとる拍子が
田植えを してるみたい。
猿回しの服が たくさん 出てきた。
ここに 住んでる お客さんが、
すごい 驚いて 、笑って、一緒に
座りながら、
手だけ ヒラヒラと 踊ってた。
『所々、オモロイのはさんで、
いっつもと違うて、楽しいなあ』
って、お婆ちゃんが
しゃべってる。
ユキノジョウは、隣の カイトに、
「その後ん 出てきた カイト達は、すげー、カッコ良かった しな。」
降参だって フリをして
正直に言う。
「だろ? オレ1番好きなんだよ、白波5人男。ユキノジョウもやりゃ、良かったんだよ。」
ケラケラって して カイトが言う。
ユキノジョウも、出れば 良かったと 少しだけ 思ったのだ。
だって、左手の 花道から
カッコいい カイト達5人組が
出てきた後、
今度は 右手の花道から
また、5人組が 出てきたのだ。
後からの5人組は、当日の
飛び込み組で、これもお客さんに ウケにウケた。
飛び込みなら、ユキノジョウにも やれたと 残念だった。
それぐらい、カイト達は
良かった。
「そうだよなー!あれなら、次の日 、そりゃ 告られるな。」
ユキノジョウは、ラムネを飲み
干して、コロンと 中の、ビー玉を鳴らす。
「だろ?あとは、中学組がやった、『手習い』の車引も 人気あるしな。次は、あれをやりたい。」
カイトは、ビー玉取れないだろ?って顔をして、ユキノジョウから瓶を取り上げながら 言う。
「車引って、どれ だったっけ?」
「あれだよ、3人出て来て、
バーって 着物のそでを
黒子が、広げるヤツ!」
「おおー!あれか!ちょうちょ
みたいに なる!ハデなヤツ!」
たしか、
エンギ?がいい三つ子が
お互いに 敵対するとこの 牛の
専属運転手してて、出会い頭に
ケンカして、見栄はりあいする
話だって、副女さんが教えて
くれた。
意味は あんま、わかんないけど、
紫と白のチェックの着物が、
羽みたいに バーって広がるのんと、三つ子の動きが ピタッて
あって その ポーズが
やっぱ、かっけーかった。
「でも、あれだな。ユキノジョウは、二人でシラサギと香箱やれたしなー。ヤクトクって言うんだぞ。」
カイトは、そういって そのまま
ひっくり返えった。
神様の社の前も、芝生がある。
「オレ、黒子やっただけだぞ。」
ユキノジョウも、芝生にひっくり
返えると、背中がヒンヤリする。
社の行灯の明かりが 頭の上で、
虫を寄せ付けながら、
チロチロ燃えてる。
ユキノジョウと ユリヤが頼まれたのは、最後の場だ。
生まれかわった お姫さまと、
お坊さんが、もう1度 出会う話。
姫さんの手から 香箱のフタが
出て来て、
お坊さんと、前世の姿に なった
お姫さまが 合わせた香箱を、
シラサギが くわえて飛んで いく
シーン だった。
ユキノジョウが、シラサギの
作り物を、
ユリヤが 香箱を
釣竿で つって、
お客さんの中を 走りぬける。
「でも、あっこの場面。不思議
だったよな。風鈴の音がしてさ。」
カイトは、出番が 終わって、
衣装のまま 脇で 見ていた。
花道の 幕がめくれて、
カイト達の 顔だけ 出ていて、
笑えた。
「オレ、シラサギ
動かしてたけど、時間、
止まってるみたいだった。」
ユキノジョウは、
ユリヤと 二人並んで、
手を つなぎながら、
真ん中を キンチョウしてたけど、
抜け出て 神様の場所に 行く。
お客さんが 誰もいないぐらい
静かで
リーーーーン
リーーーーンって、音だけ が
頭と 境内 に ひびいてる。
舞台の お坊さんと お姫さまは
そのままで 話は
終わりだけど、
まるで、あの 二人の魂に
ユキノジョウと、ユリヤが
代わりを
次いだみたいに
お客さんの波に
ユキノジョウ達は 消えた
神隠しにあう って
こんな 空気なのかも
ユリヤのこえ が 耳元にして。
「ユキノジョウ達の背中、みんな
見てて、気がついたら、紙テープ
投げてさ、結婚式みたいだったぞ」
カイトは ニカッと 悪い顔して、
ユキノジョウを 見る。
あの後は、
お客さんに エンディング用に
配ってた、紙テープを
みんながなげて、
紙吹雪が 舞台に降って、
終わりの音楽と
三番叟の猿回しのヤツらが踊って出て来てたから、
お客さんも、
舞台の役者も
みんなが、
好きずきに踊って
終わった。
「二人の 共同作業 だろ?」
カイトが、体を起こした。
ユキノジョウも、顔だけ、
機嫌を悪そうに 起きて、
「、、あれ めちゃ BLの話だろ。
ドキッてするよな。」
カイトに言う。
「男子と女子がかわって、生まれ
かわって、近くにいなくてもって 話だよなー。
歌舞伎だと よくあるけどな。
本当に あった話とかで 台本、
つくられるっていうしな!」
ユキノジョウは、
カイトの 言葉に おどろいた。
ベンテンコゾウをしてると、
そんな 風に
大人みたいな 話もでてきて、
練習とかするのか?
カイトが 1個しか
学年かわらないって、ウソだ。
舞台の片付けは、
大人達で、すっかり終わり
舞台に近い芝生に、
女子達は 座って しゃべってる。
配られたラムネの 空き瓶を
あずかりに 行くぞって
まるで、肩に傘を
広げてるみたいに、
カイトは 立ち上がる。
ユキノジョウは、
1人 舞台の方へ あるく
カイトの背中を 見たまま
すぐ 立てない。
たった1つの階段は
デカイ。
ユキノジョウの 頭の上で
燃えてた 行灯の火が
風で 消えて、こげた
においがした。
大ドロボウ一味 なんだぜ。』
そう、カイトはいい顔をした。
「白波」って墨で書かれた傘肩に
ザあッッッー!
一斉 花道 の5人組が 客席に
向く
『しらざぁ~
いってぇ きかぁ~せやしょう~』
カイトのベンテンコゾウは
戦隊ヒーロー みたいに ピシッと
そろいの 動きで、すげー、
かっけーーー!!
高い ゲタに、大人の 着物で、
和風の傘と、首に 手拭い かけて
『白波』って 中国のドロボウん
名前なんだって?
なんだよ!
ドロボウって 書いてる 傘持って
言っちゃってる じゃんかよ!
なんだかよー
ユキノジョウが 初めて 目にした
島の 歌舞伎は
くそー!! 夢みたいに チカチカ
した 万華鏡 だった。
「最初 町長がさ、籠に エッサ
エッサって、のせられて 花道を
来たんは オモロ かったなー。」
カイトが、差し入れのラムネ瓶を
ユキノジョウの 顔ん前に 出す。
「あんな籠、時代劇しか 見たこと
ないし びっくりした。あれ、
あいさつ してたの、町長か?
演歌歌手かと 思っとった。」
町長さんは、
あいさつの中で、新型ウィルスの
話とかをして、集まった全員で、
目を閉じて、静かにモクトウと、
祈りをした。
夕方のにおいがして、
ユキノジョウも、世界が幸せに
なるようにと、すぐ後ろの 神様に思った。
出されたラムネ瓶は、
開いた口 から パチパチ音がした。
「いつもの 奉納歌舞伎ん ときと、
ちがう事 ばっかりで オレらも
オモロかったな。あいさつん後の 『三番叟』もあんな 盆踊りみたい
なん、やった事、初めてだー。
芸術祭の特別バージョンだ。」
パチパチのラムネ音を、カイトが
グッと 飲み込んで ぷはーっと
笑う。
ユキノジョウは、あの 猿回し
みたいな着物と 帽子の ヤツら
ねーって 、思い出した。
チョン チョン、シャン シャン
手に楽器や、鈴をならして
足でとる拍子が
田植えを してるみたい。
猿回しの服が たくさん 出てきた。
ここに 住んでる お客さんが、
すごい 驚いて 、笑って、一緒に
座りながら、
手だけ ヒラヒラと 踊ってた。
『所々、オモロイのはさんで、
いっつもと違うて、楽しいなあ』
って、お婆ちゃんが
しゃべってる。
ユキノジョウは、隣の カイトに、
「その後ん 出てきた カイト達は、すげー、カッコ良かった しな。」
降参だって フリをして
正直に言う。
「だろ? オレ1番好きなんだよ、白波5人男。ユキノジョウもやりゃ、良かったんだよ。」
ケラケラって して カイトが言う。
ユキノジョウも、出れば 良かったと 少しだけ 思ったのだ。
だって、左手の 花道から
カッコいい カイト達5人組が
出てきた後、
今度は 右手の花道から
また、5人組が 出てきたのだ。
後からの5人組は、当日の
飛び込み組で、これもお客さんに ウケにウケた。
飛び込みなら、ユキノジョウにも やれたと 残念だった。
それぐらい、カイト達は
良かった。
「そうだよなー!あれなら、次の日 、そりゃ 告られるな。」
ユキノジョウは、ラムネを飲み
干して、コロンと 中の、ビー玉を鳴らす。
「だろ?あとは、中学組がやった、『手習い』の車引も 人気あるしな。次は、あれをやりたい。」
カイトは、ビー玉取れないだろ?って顔をして、ユキノジョウから瓶を取り上げながら 言う。
「車引って、どれ だったっけ?」
「あれだよ、3人出て来て、
バーって 着物のそでを
黒子が、広げるヤツ!」
「おおー!あれか!ちょうちょ
みたいに なる!ハデなヤツ!」
たしか、
エンギ?がいい三つ子が
お互いに 敵対するとこの 牛の
専属運転手してて、出会い頭に
ケンカして、見栄はりあいする
話だって、副女さんが教えて
くれた。
意味は あんま、わかんないけど、
紫と白のチェックの着物が、
羽みたいに バーって広がるのんと、三つ子の動きが ピタッて
あって その ポーズが
やっぱ、かっけーかった。
「でも、あれだな。ユキノジョウは、二人でシラサギと香箱やれたしなー。ヤクトクって言うんだぞ。」
カイトは、そういって そのまま
ひっくり返えった。
神様の社の前も、芝生がある。
「オレ、黒子やっただけだぞ。」
ユキノジョウも、芝生にひっくり
返えると、背中がヒンヤリする。
社の行灯の明かりが 頭の上で、
虫を寄せ付けながら、
チロチロ燃えてる。
ユキノジョウと ユリヤが頼まれたのは、最後の場だ。
生まれかわった お姫さまと、
お坊さんが、もう1度 出会う話。
姫さんの手から 香箱のフタが
出て来て、
お坊さんと、前世の姿に なった
お姫さまが 合わせた香箱を、
シラサギが くわえて飛んで いく
シーン だった。
ユキノジョウが、シラサギの
作り物を、
ユリヤが 香箱を
釣竿で つって、
お客さんの中を 走りぬける。
「でも、あっこの場面。不思議
だったよな。風鈴の音がしてさ。」
カイトは、出番が 終わって、
衣装のまま 脇で 見ていた。
花道の 幕がめくれて、
カイト達の 顔だけ 出ていて、
笑えた。
「オレ、シラサギ
動かしてたけど、時間、
止まってるみたいだった。」
ユキノジョウは、
ユリヤと 二人並んで、
手を つなぎながら、
真ん中を キンチョウしてたけど、
抜け出て 神様の場所に 行く。
お客さんが 誰もいないぐらい
静かで
リーーーーン
リーーーーンって、音だけ が
頭と 境内 に ひびいてる。
舞台の お坊さんと お姫さまは
そのままで 話は
終わりだけど、
まるで、あの 二人の魂に
ユキノジョウと、ユリヤが
代わりを
次いだみたいに
お客さんの波に
ユキノジョウ達は 消えた
神隠しにあう って
こんな 空気なのかも
ユリヤのこえ が 耳元にして。
「ユキノジョウ達の背中、みんな
見てて、気がついたら、紙テープ
投げてさ、結婚式みたいだったぞ」
カイトは ニカッと 悪い顔して、
ユキノジョウを 見る。
あの後は、
お客さんに エンディング用に
配ってた、紙テープを
みんながなげて、
紙吹雪が 舞台に降って、
終わりの音楽と
三番叟の猿回しのヤツらが踊って出て来てたから、
お客さんも、
舞台の役者も
みんなが、
好きずきに踊って
終わった。
「二人の 共同作業 だろ?」
カイトが、体を起こした。
ユキノジョウも、顔だけ、
機嫌を悪そうに 起きて、
「、、あれ めちゃ BLの話だろ。
ドキッてするよな。」
カイトに言う。
「男子と女子がかわって、生まれ
かわって、近くにいなくてもって 話だよなー。
歌舞伎だと よくあるけどな。
本当に あった話とかで 台本、
つくられるっていうしな!」
ユキノジョウは、
カイトの 言葉に おどろいた。
ベンテンコゾウをしてると、
そんな 風に
大人みたいな 話もでてきて、
練習とかするのか?
カイトが 1個しか
学年かわらないって、ウソだ。
舞台の片付けは、
大人達で、すっかり終わり
舞台に近い芝生に、
女子達は 座って しゃべってる。
配られたラムネの 空き瓶を
あずかりに 行くぞって
まるで、肩に傘を
広げてるみたいに、
カイトは 立ち上がる。
ユキノジョウは、
1人 舞台の方へ あるく
カイトの背中を 見たまま
すぐ 立てない。
たった1つの階段は
デカイ。
ユキノジョウの 頭の上で
燃えてた 行灯の火が
風で 消えて、こげた
においがした。