そうして次の日いつもの様に肩を落としながら工場へ行く。私は検査をしながらも転職の事ばかりを考えてしまった。そんな状態で仕事をしているので何時もの様に上司に注意されるが心ここにあらずで耳に入らない。

「今野さん、私の言う事を聞いているの?」
「あっ。すみません」
「皆、同じ給料を貰っているのよ」

ああ。そうだった。皆に悪いと思う。落ち込んで手を止めていると上司が私の傍にくる。
「ほら、休んでないで早く仕事をして」
「はい。気をつ……」

また声が出てこない。喉がおかしいのかな。
そうして半日が経ちお昼の時間になった。急いで他人にバレないよう、誰よりも早くロッカーに行って、昨日武田さんに聞いて登録しておいた中古車屋さんに電話をかけてみる。声はちゃんと出るだろうか。

「もしもし、今野と申します。求人情報を見て電話したのですが、まだ応募の方はしていますでしょうか?」

大丈夫だ。声はきちんと出る。