「そう言えば、国道沿いの中古車屋さん、求人が出てたよ」
武田さんはさらり、そう言うと、オムレツを口に運びながら話を続ける。
「事務の仕事みたい。未経験者でも可って書いてあったから、今野さん電話してみたら?」

「えっ?何て言う中古車屋さん?」
「オートセールスっていうところ」
「あっ知ってる」
そこは大きな中古車屋さんで、車の部品を販売していたり、車検なども行っている場所だ。私は途端にそれに興味を示した。未経験者でも可なら行ってみたい。武田さんは行く気は無いのだろうか。

「何処に求人が出ていたの?」
「ネットで検索すれば簡単に出てくるよ」
「武田さんは応募しないの?」
「私はパソコンとか苦手でね。いざ転職するとなるとやっぱり考えちゃう。気を遣いそうだし、今の仕事の方が楽そうだもの」
「そうなの?私には苦痛でしかないのだけど」
「向き不向きがあるのかもね」
そう言って武田さんは持っているスマートフォンを弄ってから、
「ほら、この会社」
と言って求人情報を見せてくれた。画面には
『データ入力』
『電話の応対』と出ている。

パソコンか。高校生の時に授業で習っただけで、そんなに得意ではない。だが、今の仕事を続けるのも嫌であった。そもそも私に合う職業なんかあるのだろうか。もしかしたらどんな仕事も合わなくて、私は社会に適応できない人間なのかもしれない。

そんなのは嫌だ。

「電話してみる。電話番号教えて」
私は武田さんから情報を得てスマートフォンに中古車屋さんの電話番号を登録した。