朝日がまだ登り切っていない時間、私はカイさんと森に来た。
そこには、昨日まではなかった井戸があって、多分これが人間界に帰る入り口だと思う。
「本当に、最後に会わなくていいのか? せめてキキョウにだけでも」
「いいんです。だって、皆の顔見たら…………帰りたくなくなっちゃいますから」
キキョウさんの顔を思い浮かべると、胸が締め付けられる。
「真由……」
カイさんの手がぽんと頭の上に乗る。
この大きな手から伝わってくる温もりも、今日で最後。
「たくさん、この世界のために頑張ってくれたな」
カイさんの言葉に、我慢していた涙が一筋溢れて、草の上に落ちる。
せっかく、最後まで笑顔でいようと決めたのに。
「私、カイさんの役に立てましたか?」
「ああ、もちろんだよ」
「それなら……よかった、です」
堰を切ったように、涙が次から次へと溢れ出し頰を濡らした。
「私、もう行きます」
カイさんの手が私から離れる。
「元気でな」
「カイさんも」
井戸に近づくと、1年前のあの時のように強い力で吸い込まれた。
そこには、昨日まではなかった井戸があって、多分これが人間界に帰る入り口だと思う。
「本当に、最後に会わなくていいのか? せめてキキョウにだけでも」
「いいんです。だって、皆の顔見たら…………帰りたくなくなっちゃいますから」
キキョウさんの顔を思い浮かべると、胸が締め付けられる。
「真由……」
カイさんの手がぽんと頭の上に乗る。
この大きな手から伝わってくる温もりも、今日で最後。
「たくさん、この世界のために頑張ってくれたな」
カイさんの言葉に、我慢していた涙が一筋溢れて、草の上に落ちる。
せっかく、最後まで笑顔でいようと決めたのに。
「私、カイさんの役に立てましたか?」
「ああ、もちろんだよ」
「それなら……よかった、です」
堰を切ったように、涙が次から次へと溢れ出し頰を濡らした。
「私、もう行きます」
カイさんの手が私から離れる。
「元気でな」
「カイさんも」
井戸に近づくと、1年前のあの時のように強い力で吸い込まれた。