「いらっしゃいませ」

 私は私が出来ることをやる。

「あら、笑顔が可愛いわねえ、カモミールティーくれるかしら?」

「はいっ、かしこまりました」

 カイさんを見ると「やってみるか?」と聞かれて、私は迷うことなく頭を縦に振った。

 注文をしてくれたのは、和かな顔の50代くらいの女の方。

 彼女の方を見て目が合うと微笑みを返してくれる。

 こうやって、積み木を重ねていくように少しずつ少しずつ前に歩いていく。

 自分が今淹れることのできる最高のハーブティーを提供する。

 お湯を注ぐと香ってくるカモミールの香り。

「いい香りね」

「はいっ。匂いも味も、落ち着くお茶です」

「そうね。ハーブティーに合うお菓子ってあるかしら? 少しでいいんだけど」   

「えっと……」

 どうしよう……ハーブティーのことばかりでプラスアルファのことは何も知識がない。

 勉強不足を痛感する。