『お属初め』の日がとうとうやってきた。
俺は子供用ベッドに寝かされており、そばには母リアがいる。
母上は、落ち着かないのか、俺のベッドの脇を行ったり来たり、時には俺を抱き上げたりしている。
執事のハンスが、叔父の訪問を伝えると「すぐ戻る」と、父上が部屋を出てから大分時間が経っている。
「遅いわね。何かあったのかしら?」と、母上がこぼすと、トントンと扉をノックする音が聞こえた。
「はい。どうぞ」
母上の返事とともに、扉がゆっくり開き、複数の気配を感じる。
「義姉さん、ご無沙汰しています」
「ヴィリー、元気そうね」
「えぇ、義姉さんも元気そうで安心したよ。相変わらず美しいね」
「ありがとう。お世辞でも嬉しいわ」
「私は世辞はいわないよ。美しい人に美しいと称しているだけだよ」
ヴィリバルト叔父さん、初見ですが、侍女情報と大分違いませんか。
なんだかチャラ男臭がします。
そして横にいる父上から相当な威圧を感じます。
「兄さん、挨拶だよ」
「わかっている」
「嫉妬深い夫を持つと大変だね、義姉さん」
「うふふ、嬉しいわ」
「リア」
「はいはい。ここでイチャつかないでくださいね」
「わかっている」
慣れって怖いよね。
この程度のイチャつきならもうスルーできますよ。
いつでも二人の世界へ入りますからね。
「それでは、今日の主役君と対面いたしますか」
「ヴィリバルト、優しく扱えよ」
「わかっていますよ。まだ赤ん坊なんだから、丁重に扱いますよ」
「なんだ」
「なるほど。兄さんのことだから、首もすわっていないジークに高い高いとかして、乱雑に扱ったとアンナに怒られたんですね」
叔父さん正解です! 現場見ていたんですか!
俺は半分意識が飛んでいたけれど、もうこってりぽってり絞られていましたよ。
「見ていたのか!?」
「兄さん、私は任務で昨日帰国したばかりです」
「わっ、わかっている」
「ギル、ヴィリーには勝てないわ」
会話しか聞こえない状況だが、なんとなく把握はできる。
父上、さきほどまで目が泳いでいましたね。母上の参加でこの話が終わったと安堵しましたね。
ええぇ、えぇーー、まだ二ヶ月の付き合いですが、俺にはわかりますよ。
叔父は一歩引いて、事の成り行きを静観する。これがアーベル兄弟の日常であると、この数分の会話で察しました。
視界に細長い影が入る。
父上とは違う、大きく繊細な手が頬を撫で、俺を抱き上げた。
「はじめまして、ジークベルト。叔父のヴィリバルトだ」
まだ視力は、顔を詳細に把握できないが、父上と同じ鮮やかな赤は認識できる。
「義姉さんに似ているね。男にしておくのはもったいないね」
「そうだろう」
「うふふ、そうでしょう。私と同じ色の髪に瞳なの。他の子供たちは、ギル、アーベル家の遺伝子を引き継いでしまったから、とても嬉しいわ」
「義姉さんの色は珍しいからね」
母上と同じ外見で似ているのは、すごく光栄なことだけど、ますます容姿確認したくないなぁ……。
男にするには勿体ない愛らしい顔立ちってことですよね。
父上までもが賛同するぐらいだから、生まれてくる性別間違えたかね。
ただ俺はノーマルなので、女性にはなりませんよ。女装もしませんからね。
だから母上! 叔父と一緒に女の子の服を検討しない! 「可愛いと思うぞ」って、父上! 賛同しない!
あぁー。俺が身動きできない赤ん坊だからって、勝手に話を進めないでください。
泣くぞ! 思いっきり泣くぞ! いいのかっ!
俺の心の声とは裏腹に大人たちは、楽しそうに会話を続けていた。
「今から君に『鑑定眼』を使うね、特に身体が痛くなるとかはないから安心してね」
脱線してようやく本題です。
意外と紳士な叔父。ご丁寧な申告ありがとうございます。
隠蔽スキルよ、上手くやってくれぇー。マジでなんとかしてくれよ。頼むぞ!
上手く隠蔽ができていれば、叔父に見えるステータスはこれだ。
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ジークベルト・フォン・アーベル 男 0才
種族:人間
職業:侯爵家四男
Lv:1
HP:10/10
MP:10/10
魔力:50
攻撃:10
防御:10
敏捷:10
運:200
魔属性:火・風・土・水・無
身体スキル:毒耐性Lv5・麻痺耐性Lv4・状態異常耐性Lv3・闇耐性Lv3・呪耐性Lv7
称号:幸運者
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魔属性は、実用を考えて五個。
本心は、光と闇も加えたかったが『将来全属性所持の可能性あり』なーんて、大騒動になる気配がしたので断念。
そもそも隠蔽スキルを取得した意味がないしね。
ステ値は、MPと魔力を隠蔽。
魔属性が五個も適応されて、魔力が低いのはどうかなぁと思い、平均より上の50にしてみた。
運値はそのままで、称号から察知してくれるかなぁと期待。
称号を残した理由は、今後の行動で『最強運』だからと、周りが納得してくれれば重畳。
加護と特典スキルはすべて隠蔽した。これを隠さずに何を隠すのかとなるよね。
母胎時に取得した身体スキルだけは、一切隠蔽しませんでした。
母上が頑張ってくれた証ですしね。