叔父の『魔テント』は、ディアーナ王女たちが、使用することになった。
 ここでもひと騒動あり、俺が王女たちと一緒にテントの中に入る入らないで、大いに揉めた。いくら王女と同じ年であっても、問題があると男女の騎士が騒いだのだ。

 だから空気を読め!
 いい大人が地団太を踏むなよ!
 俺の中での騎士像が、崩れていくから!
 頼むから、空気読んでよ!

魔テントの中は、空間魔法で拡張されており、中は十二畳ほどの大きさで、キングサイズのベットとソファと机がある。
 早い話、ディアーナ王女がベット、俺がソファでと、叔父たちの中で、まとまっていたのだ。
 それを騎士二人が、空気を読まずに騒ぎだし、いまや事態の収拾がつかなくなった。
 自国の騎士の醜態をディアーナ王女が、困った顔をしながら、抑えようとしているが、どうも耳を傾けてくれないようだ。
 あぁー。王女の尻尾と耳が、ペタンと下がっている。可哀想だ。

 ぶるっ。

 一瞬、身体に悪寒がはしった。
 その一因にそっと目を向ける。

 叔父の顔から、表情がなくなっている!
 バルシュミーデ伯爵のこめかみに筋が!

 これはまずい!
 やばい空気を察知した俺は、機転を利かせ、わざと明るい声をだして「外で寝るのも楽しそうですね」と、無邪気を装った。「そうですね。楽しそうです!」と、聡いディアーナ王女が、それに合わせてくれる。
 うん。王女とは、気が合いそうだ。二人で仲良く話しをしていると、侍女のエマが「姫様ーー。それだけはご勘弁をーー」と、必死に止めていた。その姿がとても面白く、王女と二人で笑い合う。「なにか面白いことがありましたか?」と、汗をかきながら、不思議そうに問うエマに「エマは、そのままでいいの」と、王女が笑顔で答えた。
 場の雰囲気が和み、俺があらためて、叔父と一緒に外で寝ると、宣言して、その場をおさめた。


 王女たちが、魔テントに入ったのを確認して、俺たちも、就寝の用意をする。
 さてどこで寝ようかな?
 野宿なんて初めての経験なので、不謹慎ながらワクワクしている。土魔法で、かまくらを作るのもありだし、満天の夜空を見上げて、寝るのもいいな。と、考えていたら、叔父が、俺を呼ぶ声が聞こえた。

「ジークおいで」

 なぜか叔父が、色気全開で、マントを開き手招きをしている。
 えーと、俺。あの中に入らないといけない? 外で寝るとは言った……。いや、いやいや、えっ? たしかに、叔父と一緒に外で寝ると、言った。いや、でも、あれは、そう言ったほうが、おさまりがつくし。えっ? ヴィリー叔父さん、あの言葉、間に受けたの? いやいや、でも、さすがにあのマントの中で、叔父との添い寝は遠慮したいのですが……。
 俺が戸惑っている間に、あれよあれよと叔父に捕まり、懐に収められた。