あの事件を機に、俺は強くなる決意をする。
今ある環境を存分に活用することにした。チート上等だ。
人目を気にするのをやめた俺の行動は、侍女たちをいささか困惑させたようだった。
しかし、優秀な侍女たちは、順応が早かった。
まず戦闘能力を上げるため、戦闘スキルを取得しようと試みたが、幼児には難しかった。
訓練するにも身体が小さ過ぎて、武器を構えることもできない。武器を所持しない体術なども身体が保たない。
では基礎だけでもと考えたが、未熟な身体が対応できるほど、甘くはなかった。
身体スキルはどうだろうと考えたが、実戦と経験が必要であるため、これも断念した。
次に魔法書だ。部屋にある魔法書を読み漁った。
また、知識本もいくつか見つけ、読破する。
その頃には、言葉を流暢に話せるようになり、侍女たちとのコミュニケーションも円滑になった。
屋敷内なら自由に歩けるようになり、書庫の存在を知る。
そこに毎日入り浸ることになるが、目標である『強く』には、ほど遠かった。
魔法の修練は続けているが、MPにも限りがある。上位の魔法スキル取得には、魔力値が足りず、足踏み状態なのだ。
ここ数日、書庫に入ると、本を読まずに考え込むことが多くなった。
もっともっと修練がしたい。徐々にはスキルLvも上がり、強くもなっている。
だが今の修練では、満足ができない。時間はある。だけど待ってはくれない。
どうすればいい。俺はチートだ。これを生かすしかない。遅かれ早かれバレるのだ。
決断しろ、ジークベルト!
現状を打破するため、使いたくはなかったが、最終手段に打って出ることにする。
そうと決めたら、行動あるのみ!
書庫から廊下にでて、目的の部屋へ足を運ぶ途中、タイミングよく最終手段が、こちらへやって来た。
「テオ兄さん!」
「ジーク、どうしたんだい」
十歳上の次男テオバルト兄さん、アル兄さんの陰に隠れがちだが、とても優秀な人だ。
じつは魔属性を五個所持しているが、非公表であるため、周辺は穏やかだ。
頭の回転が速く、物腰も柔らかい、性格もよく、アーベル家兄弟の中で、一番の優良物件だと俺は思う。
だが、目立たない。いかんせん存在感がないのだ。
これはもう特殊スキルかと疑うぐらいの存在感の薄さである。
そのテオ兄さんの秘密を、俺は知っている。
ここは直球でいく。
「次の魔物討伐に連れて行って欲しいんです」
「えっ、何を言っているんだい、ジーク?」
「ぼく、知っていますよ。テオ兄さんが冒険者ギルドに登録をしていることを。Eランクですよね」
「はっ?!」
「来週、ご友人のニコライ様と行きますよね。魔物討伐。ぼくも連れて行ってください」
俺は笑顔のままテオ兄さんを見つめる。
テオ兄さんは、表情を引きつらせたまま動かなくなる。
テオ兄さんの秘密は、家族に内緒で、冒険者ギルドに登録して魔物討伐をしていることだ。
理由は、テオ兄さんの友人であるニコライ・フォン・バーデンである。
ニコライの妹セラが難病にかかっており、膨大な医療費が必要なのだ。
バーデン家は、先々代からの没落貴族だ。
金銭工面のため、ニコライは幼少期より、冒険者ギルドで活躍している。
テオ兄さんは、そのニコライのお手伝いをしているようだ。
この情報源は、ヘルプ機能からです。いい仕事するよね。
テオ兄さんのステ値を確認した時に発覚しました。
掘り下げもここまできたら、すごいとしか言葉がでない。どこまで掘り下げられるんだろうか。
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試してみますか。
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怖いので、遠慮しておきます。
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残念です。
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週に一度、週の二日目に、魔物討伐をしに出掛けているのも情報収集済みだ。
この世界は、一週間が六日、月が週五の三十日、年が十二ヶ月の三百六十日である。
第一週の一日、二日、三日と表現する。
今日は第二週の四日だ。