話し合いの結果、今日の戦闘はここまでにして、セーフティポイントで一夜を過ごすことにした。
英気を養い、明日裏迷宮から脱出する。
次の階層に繋がる階段がないため、階層スポットがこの裏迷宮の脱出路であるだろうと予想させた。
ヘルプ機能もその予想に文句はないようだ。
幸いなことに、この場所から階層スポットまでの距離は短い。
魔物討伐しながら、正しい方向へ移動していたようだ。
最初の着地点からは、だいぶ離れている。
討伐した魔物数は数百を超え、俺もハクもレベルが上がった。もちろんディアたちも上がっている。
計算上、脱出するまでに俺のレベルは、Lv18になると思われる。
ハクは聖獣のため、人より倍の経験値が必要なため、おそらくLv13で終了だ。
ディアーナとエマも戦闘数にもよるが、Lv13なるかどうかギリギリのところだ。
スラは特種体のためか、経験値が人の三分の二であり、非常にレベルが上がりやすいことが判明した。 すでにLv8だ。脱出までには、Lv10になっているかもしれない。
思わぬハプニングだったが、当初の目的のレベル上げができたと、にんまりしていると『バシャーン』と、水の音が聞こえた。
慌てて目を向けると、ハクの背中に乗っていたはずのスラが湖に浮いていた。
ハクは湖の際で、スラの行動に唖然としている。状況からスラが自ら飛び込んだと確信しつつ、戸惑っているハクの頭をなでながら、湖に浮くスラに声をかけた。
「スラ、どうしたの?」
「ピッ!〈ちからわく!〉」
「えっ? 力?」
「ガゥ?〈ちから?〉」
「ピッ〈のむ〉」
「湖の水を飲めってこと?」
「ピッ〈そうだ〉」
スラはその水色の体をプルンと揺らし肯定する。
ん? どういうことだ。
湖の水を手ですくい、口をつけるが、味も匂いも特に変わったことはない。
おいしい水だ。
ハクも湖に顔を近づけ水を飲むが、首をかしげる。
俺と同じ感想のようだ。
不思議に思い、湖の水を『鑑定』したところ、驚くべき結果が出た。
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魔力の湖
効果:MP値が1-10増加する。
説明:魔力を含んだ湖。この湖の魔力水を飲むと初回のみ魔力が増加する。
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わぁーお。すごいの見つけたよ。
全員のステータスを確認すると、MP値が10上がっていた。
一回だけであっても魔力値を増加できるアイテムなんて『ステータス玉』以外、俺は知らない。
これ大発見なんじゃ。
「スラ、お手柄だよ。この水は初めて飲む時にだけMP値が上がるんだ。現にぼくとハク、スラ、全員のMP値が10上がっているよ。大発見だよ」
「ピッ!〈肉!〉 」
「ぶれないね。わかったよ。休憩にしよう。湖からあがっておいで」
ぶれないスラに、苦笑いして、塩胡椒で焼いたオークの肉を『収納』から出す。
スラにも味覚はあるようで、生よりも焼いたオークの肉を好むため、野営時に大量に用意したのだ。
「ピッ!ピッ!ピッ!〈肉、肉、肉!〉 」と、歓喜しながら湖から上がってくるスラに、また少し大きくなったかもと思う。
出会った頃は、五センチほどの大きさだったが、現在は一五センチほどに成長している。
どこまで大きくなるのか楽しみだ。
ハクの前にもオークの肉を置くと「ガゥ?〈いいの?〉」と問われた。
スラのお手柄のご褒美であると察したため、気にしたようだ。
「これはご褒美じゃないよ。休憩のおやつだから遠慮する必要ないよ」
そうハクに伝えるが、イマイチ説得力がないようだ。
オークの肉を体内に吸収しているスラが、それに気づき俺に念話で話しかけてきた。
念話の使い方が上手い。
スラにハクが躊躇している理由を述べると、食べ終わったスラがハクの前足を叩き促す。
「ピッピー〈せなかかりた。だからいっしょ〉」
「ガゥー〈ありがとう〉」
ハクが感謝を述べると、オークの肉にかぶりついた。
なにこの友情と、感動する間もなく、スラからおかわりの要請が入る。
スラはスラだね。
現在、俺とハク、スラは、セーフティポイント内のオアシスを探検している。
時間が空いたのと、新しく魔契約したスラとの交流を深めることを目的に、あと意外に大きかったオアシスが、冒険心を芽生えさせたのも大きい。
まぁ単なる暇潰しである。
それにしても、このオアシスは宝の山かもしれない。湖の水が『魔力水』なら、湖畔にあるこのキラキラした砂はどうなのだろうと鑑定したところ、大あたりだった。
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魔法砂S+
説明:セーフティポイント製の魔力を含んだ砂。
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自力で魔法砂S+を獲得しました。
これでガラス石ができる。
これ大量に確保しよう。
『収納』から空の容器と袋を出し、砂と水を中に入れる。
ハクとスラは、おやつタイム中なので、その間に集めるだけ集めてしまおう。
俺がせっせと作業をしていると、食べ終えた二匹が、不思議そうに砂を詰める俺を見ていた。
「ちょと待ってて、もう2袋で、砂は完了するから。あとは水を容器に入れるだけだから」
「ガゥ!〈手伝う!〉」
「気持ちは有難いけど、容器の中に水を入れるんだよ」
「ガゥ〈大丈夫〉」
ハクはそう言うと、容器の蓋を器用に口ではずし、容器をくわえ、次々と背中へ投げる。
その背中には薄く伸びたスラがおり、その容器をキャッチしている。
十本あった容器をすべて背中にのせたハクは、はずした蓋をくわえ、湖に歩いていく。
俺は砂を詰める手を止め、ハクたちの行動を見守る。
どのようにして水を入れるか興味が湧いたのだ。
湖の際で足を止めたハクは、スラになにか指示をする。すると容器が湖に次々と投げ込まれ、最後にスラが背中から飛び込んだ。湖に浮かぶ容器の上にスラが乗り、容器を沈め水を入れる。容器が沈みきると陸にいるハクに渡し、ハクは口で容器を受け取り、蓋をする。
おぉー。素晴らしい連携だ。
思わず拍手をして、ふたりの連携を褒める。
俺もがんばろうと、残り二袋の砂詰めに集中する。
結果、魔法砂が十袋(計50kg)、魔力水が十本(計20L)獲得できた。
味を占めた俺は、ハクたちとオアシス内を歩き回り、くまなく鑑定した結果、これらを発見する。
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魔草S+
説明:セーフティポイント製の魔力を含んだ草。
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魔木S+
説明:セーフティポイント製の魔力を含んだ木。
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魔草はMP値回復薬のもとであり、魔木は魔道具の作製する。
魔草が五十、魔木五本を獲得した。
今回獲得したものは、すべて強い魔力を帯びている。この空間が強い魔力でできている証拠である。
これも誰かがつくったのかといらぬ考えが頭をよぎる。
軽く身震いするも、頭を振り、平静を装った。