「これ読んでて俺は背筋が凍ったわ。王子も結構そのへんの男と変わらないんすね!」

「なんでこれが」

 ばっと二人を見る王子だが、その二人はというとしれっとしたもんで見られたところでだから何? って感じだ。
 まあ画像提供してくれたのこの二人だけどね。

「兄貴の友達にホストがいるけどこんな感じですよ。いいですね、姫と王子のやりとりはなんかほのぼのしてて仲良さそうで。んで、落合サンのほうはと言えば」

 この二人がどういう経緯で連絡先を交換したか、どういう経緯で連絡を取り出したのか、それはこの際良いとして問題はその中身だ。

 高砂恵茉とのメッセージは授業中に落書きをしてたとか、バイト先の駐車場に猫がいたとか、ほわんとしたカップルのそれである。

 翻って落合絵里奈のほうは、結構熱烈にアプローチしてるのが見て取れる。次の休みは遊びに行こうとかそういうやつだ。確認済みだがその日は高砂恵茉は美術部の展覧会で一日中、部の人間と一緒に居たらしい。

「まあどっちも傷つけないようにしたい気持ちはあったんでしょうけどね、それは俺には関係ないので、次……」

「目黒くん! こんなの聞いてない! 僕はこんなことまで依頼してない!」

「しなくていい、とか指定も受けてないもんで……まあまあ座って座って」

 ぐっ、と唇をかみしめる王子の人相は王子と呼ぶにはちょっとなって感じだ。まあイケメンには変わりないのか。俺は怒ることとかないからずっとイケメンのままだけど。

 圭介は後ろで興味深そうにこっちの話を聞いている。いや水曜にも説明したじゃん。

「なんでこんなことしてるかっていうと、俺らの依頼によって依頼人じゃない人間がいざこざ起こしてあとで変な注文がくるとめんどくさいからいわゆるアフターケア的な意味もあるんですよこれ」

「無報酬でそこまでやるのか、きみ……」

「趣味なので」

 嘘はついてない。

「つまり、落合絵里奈と北カナメの関係っていうのは王子の一方的な片思いでした、っていうのを高砂サンわかってもらおうということでした、と。落合サン、なにかあれば」

「や、とくには」

「片思いって! 絵里奈は僕に好意的だよ、それは先輩としてかもしれないけど僕はなんども」

「でもアタシ、別に北先輩のことどーも思ってないんで……」

「カナメくん、けっこう思い込み激しいのよ。許してあげてね」

「恵茉さんがそういうなら、まあ」

 こうして見ていると王子よりも姫のほうが落合絵里奈と親しそうだけど、もしかしてそれすらも彼は知らなかったのかもしれない。

 まあ別れようとしてる彼女と新しく好きな女がどういう関係かとかふつうは考えないよなあ、と思いながら時計を見る。お、10分ぴったり。今回のプレゼンは100点満点だったな。