金曜日の放課後、指定した時間に視聴覚室にやってきた王子はほっとしたように笑って「うまくいった」と言った。

「目黒くんすごいね、言われた通りに行ったら恵茉がじゃあ距離を置きましょうってすんなり頷いてくれたんだ」

「何を言わせたんだ?」

「すぐわかるよ、あ、ほら来た」

「え?」

 ドアのほうを指し示せばそこに立っていたのは今まさに話題の中心だった高砂恵茉。そしてその後ろには落合絵里奈がいた。

「えっ、なん、なに……どうして二人が」

「目黒くんに呼ばれたの。なにか面白い話を聞かせてくれるそうよ」

「そーゆーこと、んじゃ圭介、ドアマンよろしくな」

「わかった」

 視聴覚室のドアは一つしかない。防音の、あれだ、ハンドルをガチャってやると鍵がかかるやつ。音楽室なんかと同じ重いドア。

 ちなみにここは3階の端っこでベランダのない教室なので飛び降りるだけの身体能力がないのであれば窓からの脱出はおすすめできない感じ。

 準備室につながるドアもあるけど、機材ある関係で基本は鍵かかってるんだよな。

「んじゃ、とりあえずお三方は好きに座ってどーぞ」

「目黒くんこういうの好きよね」

「まーね!」

 困り笑いをする高砂恵茉と普通の顔してあたり前のように彼女の隣に座る落合絵里奈。それを見て慌ててるのは王子だけだ。

「まーまー、王子も、はい座ってどうぞ」

「目黒くん、これは」

「はい、では画面にご注目ください」

 スクリーンに映し出された俺のお手製パワポを見て王子はぎょっとする。
 タイトルはずばり、真実の愛特集、ってところだな。

「今回の依頼人には内容を説明したほうがいいかなとおもって用意しました」

「目黒先輩、マメなんですね」

「意外とな! まあ基本なんでもできちゃうんだよ」

 次のスライドにあるのは、計画の大雑把な流れ。
 情報集めて、練り上げて、今日ですってかんじのことをさらっと説明しただけなのに王子は随分顔色がわるい。

 翻って女子2人はけろっとしたもんだ。

「……とまあ、今週いっぱい俺たちはこういうことしてたわけです」

「よく見かけるなと思ってたのはそういうことだったのね」

「放課後も学校残ってるとか暇なんですねー」

「暇じゃねえよ! それが目的なの! はい次」

 3枚目のスライドに映し出したのはトークアプリのスクショだ。
 2枚あるそれは、右が高砂恵茉、左が落合絵里奈に提供してもらったもの。

 ちなみに相手はどっちも北カナメ。