まず、状況を整理しよう。

 北カナメ、3年生。文系コースの王子様だ。
 高砂恵茉、2年生。カリスマ性溢れる、こっちは姫のほう。

 そんで、落合絵里奈、1年生。特別なことはない陸上部の女子生徒。

 北カナメと高砂恵茉は進行形で交際中だ。周囲からは理想の美男美女カップルと呼ばれているくらいで、素行のいいこのカップルは教師からの評判もいい。

 なんて小説の主人公のようなスペックを併せ持つこの二人だが、そのストイックさの実態はほとんど高砂恵茉に依存していたようだ。

 平たく言うと、高砂恵茉の身持ちが堅い。
 高校生なんだからイロイロするのはちょっと待ちましょう、ってことだな。それが王子という名の男子高校生には思うところがあったっぽい。

 ただ、それを直接言うのはちょっとってんで今回依頼してきた、というのが本人の言い分だ。優しいんだか(こす)いんだかは微妙なラインな気がする。

 じゃあ、落合絵里奈は尻が軽いのかと言えばべつにそうではない。
 彼女の関心レベルはさすがに探りようがなかったが、高校生のお付き合いレベルでいえば普通の子、という感じだ。

 興味はあるし、機会があれば試してみるかも……くらいの。高砂恵茉が堅すぎるといえばそれもまあ嘘ではない。

「イメージする高砂恵茉像はわりとそのままなんだな」

「まあね、勝手なイメージで語られるやつもいるだろうけど高砂恵茉は結構そのまんまだよ」

 俺とかね、と言えば圭介は軽くうなずいた。
 実は高校入ってからの付き合いなのでそんなにずーっと一緒にいるわけじゃないのだが、たぶん俺の実態を一番理解してるのは圭介だと思う。

 本質が一緒だからだろう。基本的に俺たちは善人じゃない。悪人のつもりもないけど。

「決行日は決まったのか?」

「おう、金曜にする。陸上部も休みみたいだし」

「たまたまみたいな言い方をするな。そういう根回しをしたんだろう」

「あっれーばれてら」

 早かったな、と圭介は言うけどこの流れ自体は結構前からわかってたんだ。
 だからやりやすかったし、むしろ俺としては遅かったかな? と思うくらい。もう少し手際よくやれたことなんていくらでもあっただろう。

 ただ、王子のほうから接触してきたのは運が良かった。予想では落合絵里奈のほうがくると思ってたから幾分やりやすかった。

「じゃあ、圭介には説明しとくな。今回やっべーんだ」

「む、説明してくれるのか、珍しい」

「ややっこしいからな、じゃあまず、高砂恵茉の話からするけど」

 俺たちは善人じゃない。

 けど、世の中だって、良い奴のほうが圧倒的に少ないもんだ。