「示談で済ませて公にはなってないけど、記録には残ってる。落合絵里奈が知ってるかもしれない、それであんたは俺らを使おうとした」

「安心しろ、彼女は高砂恵茉の父親と自分の母親の関係を知らない。自分の父親は他界したと聞かされているそうだ。ちなみに迎えにいった妹というのは現在の旦那との子供らしい」

「圭介そんなん調べたの、すげーな」

「そうか?」

 しらない、と一言つぶやいて高砂恵茉はその場にへたり込んだ。
 安心したのかなんなのかわからないが、とにかく彼女にとって好ましい終わりだったのは間違いない。

 たぶん、俺たちが「事実」まで調べてきたのが想定外なだけで。

「ちなみにさっきの校内放送っていうのも実は大嘘なんだよな、説明しといてくれた?」

「ああ、北カナメもまた雅紀の〈手足〉でいいそうだ」

「そう、そうなの……目黒くんは、カナメくんも、私も、〈依頼人〉ならすべからく……」

「知ってたんじゃねえの? 俺の趣味だって」

 むかし、なんかの漫画に脅迫手帳ってもんを持ってるキャラクターが居た。
 文字通り、脅迫ネタが書いてある手帳のことでそれを見た俺はかなり心惹かれるものがあった。

 俺の趣味っていうのはようはその手帳を作ること。
 銃火器で物理的に脅すのができないから「なんでも屋」みたいなめんどくさいこともこなしてるわけだけど、それ自体も趣味だ。

 何度でも言う。俺は嘘はついてない。

「まあ、そんなわけなんだけど、どうする高砂サン。俺が知ってること、誰かに話していーい? それとも、俺の〈手足〉になる?」

「……そんなの、選択肢なんかじゃないじゃない」

 がっくりうなだれる彼女に「優等生」の面影はない。
 だから言ってるんだ、世の中にそんないいやつばっかりじゃないってな。