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(1時間も残業したら、きっと2人とも帰っちゃうよね……)


澄恵は1人で書類と格闘しながら、先に帰った2人のことを考える。


今頃美味しい料理が運ばれている頃かな……。


そう思った瞬間腹の虫がグーッと音を立てた。


「お腹減ったなぁ……」


右手でお腹を押さえて呟く。


今日はフレンチだと思っていたから、お昼御飯はおにぎり一個にとどめておいたのだ。


こんなことになるなら、ちゃんと食べておけばよかった。


今さら後悔していた時だった。


「これ、食べる?」


不意に後ろから声を掛けられて澄恵は驚いて振り向いた。


会社内にはもう自分1人しかいないと思っていたのだ。


「安田君!」


そこにいたのは同僚の安田だった。


安田はスラリと手足が長く、顔のパーツも整っている。


仕事もできて出世間違いなしと噂されているため、女子社員の中じゃ狙っている人が多い。