「寒くない?」


「大丈夫」


澄恵は頷く。


夜風に当たって少し酔いがさめてきたせいか、安田と2人きりであることに緊張してきてしまった。


その時だった。


ベンチに置いていた手と手が一瞬触れた。


「ご、ごめん!」


小指同士が少しふれただけなのに、2人同時にパッと手を離す。


少し意識しすぎだと思っても、胸のドキドキは隠せない。


「だ、大丈夫だよ」


澄恵はそう言って笑ったけれど、うまく笑えている自信がなかった。