「約束?」


澄恵は美穂へ聞き返す。


「知らない? 今井さんと久美って付き合ってるらしいよ?」


しれっと言う美穂に澄恵は目を見開いた。


上司の今井は去年結婚したばかりだ。


「そういう関係だから、仕事もほとんどしなくていいってわけぇ。おばあちゃんの骨折だって、何度目よ」


文音が書類の束を指さして言った。


なるほど、そういうことかとため息をつく。


(2人に仕事を手伝ってほしいけど……)


澄恵は心の中で思い、チラチラと2人へ視線を向ける。


2人の話題はすでに京のフレンチへと移っている。


よほど楽しみにしていたのか、お店のメニューをスマホで確認しているようだ。


(……頼めないよね)


澄恵はまたため息を吐き出す。