顔だけ動かし、甘ったるい声の相手を確認する。


思ったとおり、相手は久美だ。


久美は分厚い唇を突き出し、ついでに大量の書類を澄恵へ向けて突き出していた。


「え……」


思わず変な声が出た。


嫌な予感がする。


今すぐ鞄を持って席を立たなければ。


そう思って行動するより早く、久美は書類の束を澄恵の机に置いていた。


「今、田舎の祖母が骨折しちゃったって連絡が来てぇ。今日今から行かないといけないのぉ。残ってる仕事はこの書類だけだからぁ、お願できるぅ?」


クネクネと体をくねらせて言う久美に澄恵は唖然とする。