久美はツカツカと安田の前までやってくると、中腰になった。


「安田くぅん。ここ、難しくてできないんだけどぉ、教えてくれなぁい?」


いつも通り腰をくねらせながら言う久美に、美穂も文音も澄恵も目を丸くした。


「どれですか?」


「やだぁ安田くん。敬語なんてやめてよぉ。わからないところはここぉ」


「これ、新人社員だってできる書類ですよ?」


「えぇ? そうなのぉ? じゃあ私、安田くんに1から教わらなくっちゃあ!」


コツンッと自分の頭を叩いて舌を出している。


(な、なにあれ……)


これにはさすがに澄恵も驚いた。


不倫関係にあった今井との関係が終わりそうだから、すぐに身をひるがえしたのだろう。


呆然として久美の様子を見つめる3人。