ふと顔を上げて確認してみると、澄恵の前の席の久美がピンク色のスマホをいじっているところだった。


久美は少しふっくらしていて、体のサイズは2人分。


少し歩くだけで息切れをしてしまうため、会社の階段を使っているところは見たことがなかった。


澄恵たちよりも3つほど年上で、この会社に入って5年目だと聞いたことがある。


そんな久美が「よいしょ」と声を出して立ちあがる。


澄恵は久美から視線を反らして時計へ視線を向けた。


あと数秒で5時だ。


わくわくする気持ちを抑えて足元に置いてあった鞄を手にする。


その時だった。


「ごめぇん福森さぁん」


と、甘ったるい声が聞こえてきてギクリとした。


思わず鞄を取ろうと身をかがめたままの姿で停止した。