昨日のこともあって、つい安田のことを目で追いかけてしまう。


「これ、昨日の書類です」


「え?」


受け取った書類を見て久美は首をかしげている。


それから澄恵へ視線を向けた。


「あまりに量が多かったから、俺が半分引き受けました」


ピンと背筋を伸ばして言う安田に久美は慌てたように「そ、そうなの」と、返事をしている。


「でも、与えられた仕事は自分でするものよ。人にやらせちゃダメ」


立ちあがった久美は澄恵の前までやってきてそう言った。


澄恵はその言葉に唖然としてしまい、返事ができない。


(今この人、なんて言った?)


そもそも仕事を澄恵に押し付けてきたのは誰だっけ?


そんな空気が漂ってきても、久美本人は気にする様子はない。


すぐに自分の席へ戻ると、また鏡の中の自分に夢中になってしまったのだった。