カチッカチッと社内の時計の秒針が動くたびに、澄恵の気持ちは美味しいご飯へと向かっていく。


定時になるまであと3分ほど。


今日は同僚の美穂と文音の2人とご飯に行く約束をしていた。


先月オープンしてからあっという間に人気が出て、ようやく予約が取れた人気フレンチだ。


美穂と文音が「どうしても行きたい!」と言うので、澄恵は毎日スマホとにらめっこをして、ちょうど空きが出たタイミングで予約を取ることに成功した。


話題のフレンチレストランには澄恵も前前から行きたいと思っていたため、今日の定時を心待ちにしていたのだ。


(あと少しで終わる……)


すべての仕事を片付けて、机の上を整頓しはじめたとき、どこからかスマホのバイブ音が聞こえてきた。