「どうしたんだい杏美? 早く僕の手を握らないと、おいて帰っちゃうよ?」


「……れよ」


「うん? なんだって?」


「帰りたければさっさと帰れよ!!」


途端に自分のものとは思えない怒鳴り声が出ていた。


今まで我慢していた感情が一気に爆発する。


「悪いけど、誰もあんたのことなんて好きじゃないの! 私はただ生徒手帳を拾っただけ! 届けたのはただの親切心で、写真を見て一目ぼれなんてしてない! つーか、するわけねぇじゃん!? あんた自分の顔見たことあんの!? みんなの前で散々モテアピールしてるけどさ、そんなの信じてる子なんて1人もいないから! 小学生の妹まで巻き込んで情けないとは思わないの!? なにがラブレター百通だよ! いまどき小学生でもそんなウソつかねぇわ! あ、そうだ! あんた気がついてないみたいだから教えてあげるけど、あんたが友達だと思ってる男子たち、あんたの金が目的で一緒にいるだけだからね? 毎日昼ごはん奢ってて、なんで気がつかないわけ? ポジティブもここまできたら致命傷だっつーの! あとさ、毎回前髪かき上げるけど、汗でベタベタでキモイだけだから!!」


はぁーはぁーはぁー……っ。


(……言ってしまった)