「久保さんって内田君と付き合ってるの?」


「マジ、ありえないんだけど」


「内田君のどこがよかったのぉ?」


「ってか、男なら誰でもよかったって感じ?」


「言えてる! 矢沢君にもいい顔してたもんねぇ」


放課後になる頃、教室内ではそんな話があちこちで交わされていた。


「杏美、大丈夫?」


亜由があたしの肩を叩いてくるが、私は机に突っ伏して顔を上げることができなかった。


なんでこんなことになったのかわからない。


私はただ、親切心から生徒手帳を拾っただけ。


それだけなのに……。


「久保さん……」


おずおずとした声が聞こえてきてようやく顔を上げると、帰り仕度を済ませた矢沢君が目の前に立っていた。