どれもおいしそうだけれど、やっぱりひときわ目を引くのはいちごのショートだ。


これを食べないことには始まらない。


矢沢君は私の分と、自分のフルーツタルトを注文してくれた。


窓際の席に座ってケーキが来るのを待っている間も、緊張しっぱなしだった。


そんな緊張を察してか、矢沢君は部活内での面白エピソードを沢山話してくれた。


先輩がバスケシューズを忘れてきたから、上履きで練習していたとか。


ダンクシュートをしたらゴールネットを掴んで破ってしまったとか。


矢沢君は話し上手で、ケーキが届くころにはすっかり緊張もほぐれていた。


「ここのケーキ、噂通りうまいね」


フルーツタルトを一口食べて満足そうに頷いている。


(矢沢君って甘党なのかな?)


「ん? どうしたの?」


「あ、あの……甘党なの?」


私は考えたことをそのまま口に出して質問した。