☆☆☆

放課後が近付くにつれて私の緊張は高まって行った。


「ちょっと杏美、まだデート中ってわけじゃないのに、そんなに緊張して大丈夫?」


6時間目が終わってすぐ、亜由が心配して声をかけてきた。


「だ、だだだ大丈夫だよ!」


本当は大丈夫じゃなかった。


だって、生まれて16年間デートなんてしたことがなかったから。


「久保さん?」


突然矢沢君に声をかけられて心臓が跳ねあがる。


「とにかくリラックス! 自然体でいれば大丈夫だから!」


亜由が耳元でそう助言してくれた。


「わ、わかった」


私は何度も頷く。


本当は亜由についてきてほしいくらいだったが、その気持ちを押し殺す。


「じゃ、行こうか」


矢沢君の優雅なエスコートにより、私は教室を出たのだった。