プリントを握り締めて矢沢君の席の前まで来ると、さすがに緊張してしまった。


普段から頻繁に会話するわけでもないし、なにより女子たちの視線が痛い。


それでも誰も矢沢君に手を差し伸べないということは、きっとみんな自分の解答に自信がないからなんだろう。


でも私は違う。


英語は一番得意分野だった。


「あの……矢沢君、私のプリントでよければ見せてあげられるけど……」


そう言ってプリントを差し出す手が震えた。


「え、マジでいいの!?」


矢沢君の目がパッと輝く。


その表情に思わず胸がキュンッとしてしまう。


(うわっその笑顔反則だって! かわいすぎ!)


「う、うん」


どきどきしながら頷くと矢沢君は私のプリントを書き写し始めた。