「あちゃー、変なヤツの生徒手帳を拾っちゃったね」


亜由が顔をしかめて言う。


「い、今のなんだったの?」


自分の声が混乱で震える。


「内田君ってさ、入学式の日に登校してきて、ずっと休んでたでしょ」


「あぁ……そう言えば」


そうだったかもしれない。


この年で、この季節におたふくかぜになったとかって、先生が言っていた気がする。


だから同じクラスなのに記憶になかったんだ。


やっと納得いったのはいいけれど、あれは一体なんなんだろう……。


内田君へ視線を向けてみると、さして仲良くなさそうなクラスメートたちにどんどん話かけている。


話しかけられた生徒はみな困惑顔だ。


ポジティブといれば聞こえがいいかもしれないが、空気が読めないといってしまえばそれまでだ。


「なぁんか嫌な予感だねぇ」


杏美は内田君の様子を見て呟いたのだった。