千夜は帰り、まろとみるくは子鬼たちと遊ぶべく部屋を出て行った。
なので今は玲夜とふたりっきりだ。
思い返してみると、大学に入ってからそんなに時は経っていないのにたくさんのことがあった。
新たな出会いと別れ。
一番の衝撃だったのは、やはり梓と蛇塚の関係だろう。
あやかしと花嫁。絶対だと思っていた関係は絶対ではなく、存外もろいものだった。
柚子は運がよかっただけなのだ。
玲夜が選んでくれ、柚子も玲夜を好きになれた。
もしかしたら違う道があったかもしれない。
出会ったのが玲夜でなければ、そもそも玲夜と出会わなければ。もしくは気持ちが通じ合わなかったら、違う道があったかもしれない。
好きでいながらも別々の道を選んだ蛇塚のように。
それは決して太く頑丈なロープのような切れないものとは言えない。この関係が永遠とは限らないのだと。
それを知ったからこそ、より一層大事にしたいと思った。
決してこの絆が切れてしまわないように。
できることなら、ずっと愛しい人のそばにいられるように。
「ねえ、玲夜。私玲夜と出会えてよかったよ。色々辛いこともあったけど、あの日会えたことを神様に感謝したいくらい」
そう言うと玲夜は柔らかく微笑んで柚子の頬に唇を寄せる。
「きっと俺の花嫁と言ことで危険な目に合わせると思う。それでも俺のそばにいてくれるか?」
玲夜にとっても今回柚子がさらわれたことは、大きなショックを与えたのだろう。珍しく弱気な発言をするほどに。
確かに今回のことは柚子にとってショックは大きかった。今までは心配し過ぎる周りに過剰だと感じていたのに、それが現実に起こってしまったのだ。
けれど、それで玲夜と離れたいと思ったことはない。
「その時は玲夜が助けに来てくれるでしょう?」
自信満々に言ってのけると、玲夜は目を見張った後、口角を上げた。
それはいつもの自身に満ちた笑み。
「ああ、必ず助けに行く」
「うん。玲夜を信じてる。だからずっとそばにいてね」
「それはこちらのセリフだ」
どうかこれからもふたりでいられるように。なにがあってもこの手は離さないと誓うように手を絡ませた。
これからもそれが続くようにと願いを込めて、柚子は想いを告げる。
「ねえ、玲夜。大好き」
玲夜はふっと優しい笑みを浮かべて柚子の耳元で囁いた。
「俺は愛してる」



