鬼の花嫁2~出逢いと別れ~



 屋敷に帰ると、玄関では雪乃と、その身をずっと心配していた子鬼たちが出迎えてくれ、柚子は嬉しそうに笑みを浮かべた。


「子鬼ちゃんたち!」

「あーい!」

「あいあーい!」


 ぴょんぴょんと飛び跳ねて柚子の帰りを喜ぶ。その姿は柚子のよく知るいつもの子鬼の姿で、元気そうな様子を見てほっと安堵した。


「無事でよかった」

「柚子の猫たちが連れ帰ってきた。柚子を迎えに行きたがっていたが、また陰陽師にやられたら柚子が悲しむから置いていくことにした」

「そうだったんだ。まろとみるくは私だけじゃなくて子鬼ちゃんたちにとっても恩人ね」


 よしよしとめいっぱい二匹の頭を撫でてやると、機嫌よくゴロゴロと喉を鳴らす。


「まあ、柚子様。随分と汚れていらっしゃいます。すぐにお風呂をご用意いたしますね」

「お願いします」


 素足で走ったり、へたり込んだりと、思ったより薄汚れていた。
 慌てず騒がず、けれど素早く雪乃は準備に走った。


「そうだ、玲夜。透子に無事なこと連絡したいんだけど、スマホも鞄も取られちゃって……」


 あれらは玲夜に用意してもらった物だったので、申し訳なく思う。


「鞄は分からないが、スマホなら取り戻して部屋に置いてある。後で連絡したらいい。心配していたようだからな。鞄は津守の屋敷でなくしたのか?」

「うん」

「それなら、高道に言って探させておく」

「ありがとう」


 とりあえず雪乃に用意してもらったお風呂で先に汚れを落とし、ひと息つく。
 いつもより時間をかけて入浴すると、部屋着代わりの浴衣に着替えて部屋に戻った。
 そこには玲夜の言う通りスマホが置いてあった。
 充電は切れていたので充電器に差して電源を付けると、何件もの着信が入っていた。
 透子だけでなく、桜子や玲夜、高道まで。
 随分と心配させてしまったと反省する。
 とりあえず無事なことを知らせようと透子に電話をかけると、ワンコールで出た。


『柚子!?』

「もしもし、透子?」

『柚子、無事なの!? 怪我は? 今どこにいるの!?』

「無事だよ。怪我もない。今は屋敷に帰ってきてる」

『そう、よかった。……なにがあったの?』

「うん、それがね……」


 柚子は、梓に手紙を渡されたところから、玲夜に助けてもらうまでの経緯を順に説明していった。
 すると、電話口からでも分かる、透子の怒りを感じた。


『なんなの、あの女。随分最初と性格違うじゃない。ちょっと同情してたけど、そんなの吹っ飛んでいったわよ。っというか浩介よ! あいつ今度会ったらぶっ飛ばす!』

「あははっ、程々にね」


 正直言うとまた会えるのかは半々だった。
 玲夜は柚子の拉致に関与した浩介にいい感情は抱いていないだろうし、浩介の方が柚子に会いたくないと言うかもしれない。
 けれど、柚子の希望としてはもう一度会ってちゃんと話をしたい。そして、今自分は幸せなんだということを知って欲しい。
 助けてくれる必要なんかないのだと……。