社長を守るために秘密にしようと何度も自分に言い聞かせていたのだが、鮫島は自分の代わりにイトカが犠牲になり金我に玩具にされる事をずっと気にしていた。
 だから全てを本人に打ち明けたのだ。

「そう……だったんですね」

 社長の口から事実を聞いて『本当は良い人なのかもしれない』と、イトカは鮫島に対する見方が少し変わりお礼を言わないとなと思えたが、社長を見ると
ずっと眉間に皺を寄せている事に説教される覚悟をした。

「怒っていますよね……」
「当たり前だ。お前、どういうつもりであの男の元に行ったんだ! しかもそんな格好をして……何されるかわかっていたよな!?」
「そうですけど……」

 同じ事を鮫島にも言われていたのを思い出し『やっぱ無謀だったか…』と反省せざる得ない。

「一歩遅かったら、あのままあの男の餌食になっていたんだ。自分が女だって事をしっかり自覚しろよな」
「はい……すみません。以後、気を付けます」
「……俺も油断した。まさかお前がターゲットにされるとは想定外だったな」
「……私もです。それとあの、婚約ってどういう意味で……」

 忘れてはいない社長が金我に言った言葉。その真意がどうしても気になっていた。