「いいのかね。柴永社長にこの事を言えばキミだけじゃなく、その秘書やそれに社長自身の立場も危うくなるぞ」

 完全に人質を取られた脅しだった。この男は気持ち悪い人間だが、権力を持った人物。
 その男を敵にまわせば自分達のせいで社長の今後に悪影響になる恐れがある。黙って言う事をきかないといけない。

「……わかりました。今晩、伺います。ですが1つ・・・・・・約束をお願いします」
「約束?」
「私が相手をします。なので金輪際、鮫島秘書にも社長にも……手を出さないでください」

 イトカの返答に誰より驚愕したのは鮫島自身だ。恐怖で怯えていたのも忘れるほど、イトカの言葉に衝撃を受けていた。

「面白い女だ。わかった、約束をしよう。いいか、忘れるなよ。キミの判断次第でどうにでもなる事を」

 冷たく言い放つ捨て台詞に内心ゾッと背筋が凍りつく思いだったが、これで丸く収まるならと目を閉じ覚悟を決めていた。