真っ白な大理石の床に
壁や柱のないオープンキッチンは
まるで外国の高級ホテル。
図書館の本棚のような
庶民には考えられないレベルの食器棚には
高価な皿やグラスがきちんと整理され並べられていて
他にも調味料や調理器具は一切表には出ておらず
すべて棚に収容されている。
包丁に至っては数種類もある。
それだけ揃っていながらも
ゴミ箱と冷蔵庫には何も入っていない。
本当に、何もだ。
「生活感がなさすぎる…
何を食べているの、あの社長」
中身が空っぽの冷蔵庫を見つめがら
ふと考えてしまう。
この1か月
社長がキッチンに立っている姿は疎か
そもそもこの豪邸で食事をしているところすら
見た事がない。
シェフを雇っている様子もないし
食事は作らなくていいと言われているから
彼がどこで何を食べているのか
四六時中一緒にいるワケではないため
よく知らないのだ。
「もしや何も食さない怪物だったりして…
いや、有り得る」
”シバ社長=絶食悪魔”なんて呑気に考えていたが
今はそんな場合ではなく
『社長から頼まれていた仕事をしないと』と
掃除の手を速めた。